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藤原光さん

藤原光 ふじわらひかる。ブログ「ひかるのこころhikaru99.com」を運営。 掌編小説や、ショートショートと呼ばれる、短めの小説を書いています。人間観察や、風刺的なものが主です。 Twitter @fhikaru99

性別 男性
将来の夢 心理学者・カウンセラー
座右の銘 人間万事塞翁が馬

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とあるフレンチレストランにて

17/05/01 コンテスト(テーマ):第134回 時空モノガタリ文学賞 【 正義 】 コメント:0件 藤原光 閲覧数:3732

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ここはとあるフレンチレストラン、「アステューシュastucieux」。海辺の景色が見えるこの店は、インターネットでの評判によると、料理の味もいいと、評判である。メニューも安めのものから高めのものまで揃っている。特に隠しメニューの「モアジー風」のものが人気とのこと。予約も数か月先まで取れないらしい。輝は友人とこのレストランにやってきた。

輝たちは、なんてことのないコーナーの席に案内される。店員から紙のメニューリストを渡される。輝たちはメニューを手に取り、注文する。注文後あたりを見渡すと、その席からは何やら、店の奥に特別豪華な席があるのに目が入った。

そこに気取っているだけなのか、はたまたはったりか、セレブ風の叔母様方が3人ほど、リムジンで現れた。常連なのか、景色が見えやすい、エリアをVIP風に囲まれた高いそのテーブルに招待されていた。彼女たちが隠しメニューの予約の人たちだというのは、直に察することができた。彼女たちのメニューリストは、輝たちが見ていたものとは違い、大きく重量感のあるものであった。

好奇心旺盛な輝たちもメニューだけは見てみたいと思い、店員に聞いてみた。すると隠しメニューは予約がいっぱいで今日は注文できないとのこと。それでも気になる輝達は、隠しメニューリストを持ってきてもらった。店員さんはにやりと怪しげな笑みを浮かべた。

隠しメニューのリストは、重々しく額に入っていて、文文字は金色で書かれている。メニューは以下のような感じだった。
ムール貝とブルーチーズのソテー モアジー風
どうやら、同じ料理名の最後が「モアジー風」とつけられている。ただ値段は通常メニューの4倍する。さらにメニューの最下部に生命保険の注意書きのように細々とした字でこう書かれている。
『本メニューは、フランスから直送の特に本場のモアジー風につきましては、耐性のない日本人の体質には少々、体調をお崩しになるお客様も、中にはいらっしゃいます。当店では一切責任を負いかねます。あらかじめご了承ください。』
確かに最近食中毒などで厳しいとはいえ、このような表示を見るのは珍しい。
メニューの写真と取ろうとスマートフォンをメニューに向けようとすると、先ほどの店員が飛んできて撮影を止められた。本当に貴重なメニューのようだ。

しばらくすると輝たちのテーブルに料理が運ばれてくる。美味しいが、なんてことないレストランでの食事の味である。
食事中、輝たちは奥様方の砦席の方に目が行った。シャンパンなども注がれ、完全にセレブである。
今度は奥様方に料理が運ばれていく。叔母様方のテーブルには、付き人もいらっしゃる。どことなく雰囲気が豪華である。いちいち彼女たちのエリアに入る際にウェイターたちが一礼してから入場している。
派手な女A「おお、美味しい。さすが本場のモアジー風は一味違うわね。」
女B「だよねー。これだよねー。」
3人の中では普通っぽい女C「なんか、ちょっとカビ臭くない・・・?」と控えめに口にする。
女A「これがモアジー風よ。フレンチって本場はこういう味なのよ。」
と、大きな声で、他の客にも聞こえるようにでかい声で感想を口にする。

そのVIP席の雰囲気に圧倒される輝をはじめ、他の客たち。

輝「ちょっとトイレ行ってくるね。」
そういい、輝は、席を立った。ただこの建物はいたるところがフランス語で書かれており、フランス語が分からない輝は道に迷った。トイレの場所が分からずに、店内を歩いていると、喫煙所にたどり着いた。しかも客用ではなくスタッフ用のようである。そこで、何やらシェフやオーナーたちが、何やら嘲るように笑みを浮かべている。
シェフA「ありがたがって食べてくれちゃうし、残飯処理にもなって利益も上がるし、一石三鳥っしょ。」
シェフB「そもそもモアジー風って、カビてるって意味だからね。明らかにブルーチーズの味とは違うけど、それでも『本場』とか言って、ありがたく食べてくれちゃうんだから、いいんじゃない?『お客様のご要望にお応え』してるよね。店員の要望にも。」にやりと笑った。
オーナー「味なんてわかりゃしないんだ。ただ見栄を張りたいだけなのを、うまく利用させてもらってるだけよ。そもそもmoisiの意味が分かるくらい頭が働けば頼まないっしょ。それでも大満足みたいだし、予約もいっぱい。誰も困ってないって。これぞwin-winのビジネスだよ。お客様を楽しませるという正義に乗っ取っているよ。」

お客様のご要望に的確にお応えしている、このフレンチレストラン「アステューシュastucieux」は、今もなお、奥様方を中心に、非常に繁盛している。この人気は衰えるところを知らない。

注:
moisi:カビているの意味のフランス語
astucieux: ずる賢いの意味のフランス語


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