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熊野ゆやさん

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台湾スイーツを食べたい

17/04/29 コンテスト(テーマ):第133回 時空モノガタリ文学賞 【 スイーツ 】 コメント:0件 熊野ゆや 閲覧数:535

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 台湾スイーツを食べたい。お店に行くといつも閉まっている。予め時間を確認してから店に行けば台湾スイーツが食べられただろう。しかしそうはしなかった。食べたいという気持ちに本気さが足りないのだろうか?
 根っこにあるのは、台湾に行きたいという気持ち。でもそれには準備が大変。お店の時間を確認する簡単な任務が遂行できない現在の僕には難しいだろう。旅行会社にお金を払って準備してもらったって、乗る飛行機の時間とか泊まるホテルの名前とか間違えられないし、着替えを用意したり自由行動の時間に何をするか決めたり。
 去年の夏に台湾へ行けた理由は、公務員試験の結果待ちで最後の自由を満喫する気分だったから。採用試験の戦いを終えて、ご褒美を与えられるのが当然であると感じていた。
 経験上、食べ物の味はシチュエーションによって変化する。見知らぬ土地で格安の値段で食べたことないものを食べて気分が良かったんだろうね。あれからときどき台湾料理を食べたくなる。
 日本に帰ってきてから、実際に台湾料理店を食べに行ったことがある。台湾で見かけて食べた料理。同じものを注文して食べているはずなのに、そうでもない。違いがあるとしたら、旅行中の気分とか、格安ではない価格とか。足りないものはスペシャルであること。日本で台湾料理を食べることは多少の特別さを伴っているから、お店もありふれた店構えではなく雰囲気があるほうだし、ここでは珍しい料理であるから値段のほうも希少価値を考慮されている。
 お金と時間ならある。台湾に行けばいいのだろうか。そのためには気持ちの整理が必要だ。現在の僕には自尊心ってやつが足りない。公務員の採用試験は不合格であったし、その後の就職活動も上手くいかない。何がしたいのか何ができるのか分からなくなる中で思うことは、台湾へ行きたい。

 日本で台湾料理を食べたって、そんなに美味しくないと思っている。そもそも台湾で食べた台湾料理だって、そんなに美味しかったかどうか、もう既に時間が経っているし、記憶は味でさえ美化してしまうものではないか。
 頭では分かっているんですよ。でも歩いていたら視界に入ってしまったんですよ。台湾スイーツの店が。入ろうと思ったら閉まっていたんですよ。そんなに期待していたわけではないんです。気まぐれで入ってみようとしたら、閉まっていた。それを何回か繰り返しただけの話。
 基本的に台湾スイーツを食べたい気持ちは弱くて、たまたまお店の近くへ来た時に食べたい気持ちが強まって、いざ食べようと思えばお店は閉まっている。僕の気持ちがブレているからこうも嚙み合わない。
 夏の台湾は暑かった。よく考えてみれば沖縄よりも南だ。暑いに決まってる。飲み物は安かったし日本で見たことない飲み物も多かった。飲まないと熱中症で倒れるからたくさん飲んだ。マンゴーかき氷だとかミルクかき氷だとかも食べた。暑くて暑くて仕方なかった。冷たいものが美味しく感じられた。
 夏が終わり、冬さえ終わろうとしている今の季節に同じ感動を台湾スイーツに求めても無駄なことか。いや、そうではない。なんでも深読みして考えるのはよろしくない。味も感動も期待はしていないのだ。食べたいと思ったタイミングで食べられないこと、それをほんの少しだけ憂いているだけだ。

 なんとか春が来る前に仕事が決まり、引っ越しの準備を始めつつ、社員になる前にアルバイトとして会社へ通っていたら、どうにも厳しそうな会社だ続けられるかな頑張らないとなと考えさせられていたら、直属の上司が辞表を机に置いて雲隠れをしてしまう事件があり、これはまた仕事を探したほうがよさそうで、不動産屋に電話をかけ引っ越しをキャンセルしたらいくら戻るか尋ね、思えばこの会社は面接の端々で怪しい部分もあったなあと反省し、就職活動を終わらせたいがために妥協していた自分を責めていた。
 直属の上司がいないため何をしていいか分からず、直属の上司がいなくなった影響で同じ部署の人は誰も席に座っておらず、総務のお姉さんに教えてもらった部長の携帯番号に電話をかけて、状況は把握したし仕事を続けるのは無理っぽいと伝えると、部長は半ば諦めモードで頑張ろうぜと説得してきて、大人は立場柄で応戦しなければならないときは応戦するなと感心しつつ、すいませんやっぱり無理です明日は休ませてくださいと伝えた。
 翌日は不動産屋で手続きを行った。ふと台湾スイーツが食べたくなった。お店は開いていた。僕は豆花という甘めの豆腐に煮豆やタピオカが乗せられたスイーツを注文した。会社からは入社式に参加するよう言われている。しかしもう引っ越しを取りやめたことで戻らないお金も発生しているし、入社式に参加しても気が変わるとは思えない。台湾で食べた豆花と違って味がしない。


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