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比些志さん

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ウラジミールの冒険第一章

17/04/15 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 比些志 閲覧数:245

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ウラジミールとモモターリョとヒューミーコの幼なじみの三人は、多くの十代の仲間たちと凍眠カプセルに入ることを志願した。

地球は氷河期になり、人類が海底に移住してから千年ちかくがたつ。しかし、人口が増え、これ以上海底都市を拡張することがいよいよ難しくなり、やむをえず人口調整をすることになった。その対策のひとつが、若い人間を氷山の中で眠らせ、氷河期が終わるころに再生させるというものだった。

三人は、息苦しい海底生活に見切りをつけ、数千年先の地上での再生に未来をかけたのだ。

中学校の卒業式の日に三人は、凍眠カプセルに入り、まだ見ぬ地上での再会を誓って長い眠りについた。

ザザ〜

……ウラジミールはさざなみの音で目を覚ました。カピセルのふたを開け、外に出ると、そこは浜辺だった。生まれてはじめて浴びる太陽のひかりがまぶしすぎて、目を開けることができない。誰かが、砂浜を踏みしめて近寄ってきた。

「おいおい、お前は誰じゃ?」

おそらく老婆とおもわれるが、目が見えないため、声の主がどんな顔形なのかわからない。ただ、うれしいことに老婆の話し言葉は海底都市と同じだった。きっと先遣隊として先に目覚めているはずのヒューミーコの仲間たちなのだろうとおもった。

ウラジミールは老婆に今までのことを話した。ヒャーとかホゲーとか意味不明の奇声が耳ざわりだったが、老婆は最後まで聞いてくれた。

そこで子供たちの声がした。久しぶりに聞く無邪気な声にひきよせられ、子供たちに近づくと、凍眠カプセルをよってたかって棒切れで叩いている。

ウラジミールはあわてて止めた。

大声でどなったら、急に視界が鮮明になった。

背後に立っている老婆を見て、ウラジミールは息をのんだ。老婆にはツノもシッポも生えていないのだ。よく見るとさっきボコって足元に転がっている子供たちの頭にもツノはないし、おしりもノッペリしている。しかも髪の毛が黒い!

〈こいつら、何者だ。全く別の進化を遂げた新たな人類か、でなければ宇宙からの侵略者かーー〉

呆然として立ち尽くしていると、槍や刀をもった男たちにとりかこまれた。やはり、シッポはないし、ツノもない。見るからに異様だ。頭のうえにツノをかたどった髪の毛のかたまりをチョンとなぐさみ程度にのっけているが、かえって不気味に見える。

するとその中のひとりが大声を張り上げた。

「おとなしくしろ!逃げる場所はどこにもないのだ、このオニめ!」

それは間違いなく親友のモモターリョだった。ツノもシッポも切り落とし、おまけに自慢の銀髪も真っ黒に染めているが、声と目のかがやきは、むかしと変わらない。懐かしさのあまり、ウラジミールはモモターリョに抱きつこうとした。が、モモターリョはのど元に刀をつきつけた。

「ウラジミールよ、オレはモモターリョではない。桃太郎と呼ばれるこの地上世界の王なのだ」

「な、なにをいってんだーーーヒューミーコやほかの仲間たちは、みんなどうしたんだ?」

モモターリョこと桃太郎は、ただ薄ら笑いをうかべた。

「おい、モモターリョ……」

「そうか……」そこでお人よしのウラジミールもすべてを悟った。

「あぁぁ…おまえが、殺したのだな。彼女も、他のみんなも、全員殺したんだな!」

「オレたちが生きて行くためには、この地上の新たな人類に同化する以外に方法はなかったのだ。オレの仲間になるなら、命だけは助けてやる。どうする、ウラジミール?」

「ヒューミーコも殺したのか?ーー裏切り者!」

モモターリョは配下の男たちに「捕らえろ!」と指示した。

ウラジミールは絶体絶命となったが、そこで、海底都市リューギュー都の女性知事であるオットイケさんから凍眠まえに手渡された小箱を思い出した。

「ほんとうに困ったときは、この箱を開けるのです。」……

ウラジミールは胸のポケットから小箱を取り出し、そのふたをあけた。すると、白いけむりが出て、体がふわりと宙にういた。背中から大きな白い翼がひろがっている。まるで鶴のようだ。

中空に舞い上がったウラジミールめがけて地上からは弓矢と罵声が容赦なくとびかう。

「待て、オニ!」「卑怯だぞ、オニ!」「悔しかったら降りてこい、オニやーい!」

「オニって言うな!」

そう喚きながら、いつかかならずこいつらに復讐してやると誓った。

〈ーーそれまで、どこかに隠れ住むことにしよう〉

そして、ウラジミールこと浦島太郎は、地団駄を踏んで悔しがる桃太郎たちを尻目に金色にかがやく海の彼方へと飛んで行ったーー。



これは単なる序章にすぎず、ウラジミールの本当の冒険と戦いはこのあとの第二章で壮絶なる伝説として後世語り継がれることになるのだが、もちろんそんなことになるとは、誰も、まだ、知らない。

つづく


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