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あやと穂月さん

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君は電車が好きだねぇ

17/04/10 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 あやと穂月 閲覧数:143

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「ねぇ。電車に乗って海に行こう」

白いワンピースの背中を見ながら、僕は思いついたように言ってみた。

「君は電車が好きだねぇ」

振り向きながら答える彼女は、少し呆れた表情を浮かべている。
けれど、その足は駅へと向かっていて、そんなところが彼女っぽいって僕は思った。

券売機の前で肩を並べて、小銭がいくら必要なのか、あぁだこうだと言いあった。
白色が劣化したのか、それとも元々くすんだアイボリー色なのかよくわからない券売機に、チャランチャランと100円玉を入れていく。
出てきた2枚の切符を失くさないようにズボンのポケットにねじ込むと、

「すぐ使うでしょ」

と、これまた呆れた声で指摘された。

君へと切符を渡す。
指先が、かすかに触れた。
ホームに入るカボチャ色の電車がワンピースの裾を持ちあげて、目に入ったふくらはぎの白さに、僕の指先が熱を増した。

ガラガラに空いた車内で、2人横向きに腰を下ろす。
やけに濃い緑色の座席がギシっと1度軋んだだけで、他に音は何もない。
たったそれだけで、まるで僕らのために電車が走るような、そんな不思議な感覚に陥る。

流れる山々とあわせるように、つり革の白い輪っかが揺れている。
あと10秒……、あと5秒。
僕の心がドクドクドクと急いていき、遮断機のない踏切で君と肩がぶつかった。

「本当。君は電車が好きだね」

改めて君が言う。
今度は僕が呆れながら、

「違うよ」

と小さく反論した。

「じゃあ、海だ」

過ぎ去る緑を見つめる君に、僕は静かに苦笑した。


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