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笹岡 拓也さん

文章で笹岡 拓也の世界を伝えられたらいいなと考えてます。 キャラクターたちがイキイキとした物語を書いて、読んだあと何か残れるような作品にしていきます。

性別 男性
将来の夢 自分の作品を多くの人に読んでもらうこと
座右の銘 生きているだけで幸せ

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ガタンゴトン

17/04/09 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:3件 笹岡 拓也 閲覧数:458

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僕はこの街を旅立つ。子供の頃から憧れていた仕事に就くことができた僕は、生まれ育ったこの街から離れることになる。想い出もいっぱい詰まっているこの街を離れるのは少し寂しいけど、この街にいたからこの仕事に憧れることができたんだ。
「じゃあ行ってきます」
父さんは僕のことを見送ってはくれなかった。きっと父さんも寂しいんだろう。母は僕が幼い頃に亡くなった。それ以来、男手ひとつで僕のことを育ててくれた。だから父さんも寂しくて仕方ないんだろうと考えるようにした。
家を出た時、玄関には意外な人が立っていた。
その意外な人とは僕の隣に住む幼なじみだった。何を隠そう僕の初恋の相手でもある。そしてこの人がいたからこの仕事に憧れたんだ。

ガタンゴトン。僕の家のとなりに引っ越してきた女の子を、僕はお手製の電車で迎えに行く。お手製と言っても、ダンボールをくり抜いただけのものだ。
「未来ちゃん!あーそーぼ」
僕のお手製電車を見て君はニコッと笑う。
「迎えに来てくれたの?ありがとう」
僕の後ろに乗車してもらい、行きたい場所を聞く。
「お客さん、どこまで行きますか?」
今考えると電車というよりタクシーのようだ。
「楽しいところに連れてってください」
君の一声で僕はこの街のあらゆる場所を案内した。君はとても楽しそうにしてくれる。そして僕自身もすごく楽しくて仕方なかった。
このやり取りをきっと何十回も行っただろう。僕はこの電車ごっこが本当に好きだった。
そして僕がこの仕事を憧れるようになった理由はこの電車ごっこが関係している。
小学校を卒業する間際に君が言った言葉。
「またいつか電車で迎え来てね」
小学校に上がる前の遊びを急に言ってきた君。きっと君は何となく言っただけかもしれない。でもあの時から、僕は将来、車掌になって君を迎えに行こうと決めたんだ。
しかし中学校に上がってからは、君とほとんど話すことがなくなった。君はどんどん大人らしくなり、近寄り難い存在になっていった。君に彼氏ができたなんて噂を耳にするようになってからは、本当に目も合わせることもなかった。

あの言葉以来10年の時を越えて、君が僕の家の前で待っている。僕はこの状況が理解できずにいた。
「本当に電車の仕事に就くんだね」
君は僕の慌てる顔を見ながら、落ち着いて話しかけてくる。僕は軽く頷くと君はまた話し始める。
「子供の頃、電車ごっこしたでしょ?ガタンゴトンって。引っ越してきたばかりで友達がいなかった私には、本当に楽しい時間だったんだ」
子供の頃、隣に引っ越してきた君と遊びたいだけで誘っていたけど、そんなことを思ってくれてたんだと初めて気付く。
「小学校卒業の時かな?急に電車ごっこしてたの思い出してね、またやりたいなって思ったんだ。でももうそんな年じゃないし。だから将来本当の電車で迎えに来てくれたら!って子供ながらに思ったの。勝手な想いで言ったのに、まさか本当に電車の仕事するなんて」
あの時の言葉は何となくじゃなく、ちゃんとした想いで言ってくれてたんだと知れて嬉しかった。今まで一生懸命頑張ってきた想いが報われた気がした。
「なんてね!私がきっかけでなんてあり得ないよね?この話し忘れてたでしょ!」
忘れてなんかこれっぽっちもない。僕は君の言葉かきっかけで車掌という仕事に憧れるようになったんだ。
「そういえばそんな話したね」
僕は久しぶりに会った君に強がってしまった。君はそんな僕の顔を見てニコッと笑い
「就職おめでとう!」
と言い隣の家に帰っていった。


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このストーリーに関するコメント

17/04/09 浅月庵

笹岡 拓也様
作品拝読致しました。

前までは普通に話せて仲も良かったはずなのに、
いつの間にか距離ができてしまう経験が自分にも
あったので、何だかセンチな気分になりました。
二人のこれからが良い方向にいくよう願いたくなるような
良い作品だと思います。

17/04/11 のりのりこ

浅月庵様

コメントありがとうございます。
この物語はここでお終いとなりますが、
きっと二人がいる世界ではずっと物語が
続きます。
短編でも実はその先も続いてるとコメントいただいて
改めて感じることができました。
ありがとうございます。

17/04/11 のりのりこ

幼い頃同じように遊んでいた男の子を思い出して懐かしい気持ちになった。この先の2人をまた読んでみたい。

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