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そらの珊瑚さん

🌼初めての詩集【うず】を上梓しました。  (土曜美術出版販売・現代詩の新鋭シリーズ30) 🌼小説や詩、短歌などを創作しております。 🌼作品を置いています。よろしかったらお立ち寄りくださいませ。 「珊瑚の櫂」http://sanngo.exblog.jp/14233561/ 🌼ツイッター@sangosorano 時々つぶやきます。 🌼詩の季刊誌(年4回発行)「きらる」(太陽書房)に参加しています。私を含めて10人の詩人によるアンソロジー集です。アマゾンでお買い上げいただけます。      ✿御礼✿「馬」のオーナーコンテストにご参加いただきました皆様、ありがとうございました。

性別 女性
将来の夢 星座になること
座右の銘 珊瑚の夢は夜ひらく

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準急電車が発車します

17/04/08 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:1件 そらの珊瑚 閲覧数:227

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日曜日の朝風呂は
どこか わくわくとして後ろめたい
隣のおばさんがそろそろパクチー(犬です)を散歩させる時間
湯気で白く曇っている気配の浴室の窓をちらりと見て
一体誰が入っているのかしらんと
噂話を集めるアンテナにスイッチを入れるだろう

「朝風呂に入ってるのはご主人かしら
 昨晩はだいぶ遅いお帰りみたいだったし
 お隣のことなんて
 ほんとはどうでもいいんだけど
 パクチーが吠えるから眼が覚めちゃって
 年取ると眠りが浅くて嫌になっちゃう
 トイレで起きるなんてヘタしたら一晩に二回もあるし
 それでいて朝は早く眼が覚めちゃうしね
 だから、安眠妨害反対!
 ご近所迷惑よねえ、酔っ払いの騒がしさ
 でもねパクチーはおバカじゃないのよ
 まあ、お隣さんの顔を覚えないっていうのは利口ともいえないけれど
 ただちょっとだけバカ真面目なの
 日夜番犬としての職務に忠実なのよ」

まさか隣のおばさんは一家の主婦である私が
入浴発泡剤の泡に包まれて
今のうのうと風呂に入っているなどと思いも寄せないことだろう
うっかり知られてしまったら
明日には「一家の主婦なのに」的な噂が狭い町内に流れることだろう

そういえば実家の父が
「一家の主婦なのに晩御飯時にいないとはどーいうことだ」と
ことあるごとに夕食にいない母に立腹していたっけ
子供にとっちゃ、別に母がいなくとも、御飯さえそこにあったら問題ナシだから
どーいうことだ、と言われても答えようがない
おおかたどこかでまた井戸端会議でもしているに違いないって知っているでしょうが
主婦は家に【準ずる】役割をまっとうするべき
それが昔気質の父のいいぶんだった
もっと時代を遡れば【殉ずる】なんて怖いこともあったかもしれない
権力者の死と共に奴隷が一緒に死ななければいけない時代に産まれなくて本当によかった
一説によると、そんな奴隷の代用品として埴輪を発明されたそうな
多くの命を救った素晴らしい発明だと思う
結局のところ
父は母のいない食卓がさみしいだけだったのかもしれない
不器用な愛ってやつだったのかもと思い当たる
愛に準じようと思えば多少の摩擦熱が起きてしまうものだ
愛もたいがいにしろってんだ
火事にでもなったらてーへんだ

時代が変わっても、みんな誰かに(何かに)準じている

うちのセロリ(猫です)は、愛玩という役割に準じながら
(注:時々虎に戻ることアリ)
パクチーは、番犬という役割に準じながら
そしてこれからも
一生懸命に隣人をどろぼう扱いするのでしょうね

幸いなことに
私のつれあいの口から、「一家の主婦的な」言葉を聞いたことがない
彼は私がいない食卓をさみしがったりしないのだろう
そこに愛がないのか、あるのかは
平和のために追求しないこととして
家人はいつ起きてくるともわからないし
一応朝ごはんは作って並べてあるし
冷めていたらチンすればいいし
電子レンジに準ずればいいだけのこと
それにしても電子レンジは革新的な発明だと思うけど作った人の名前すら知らない
エジソンは電球を発明し、それは同時に新しい闇をもたらした
電子レンジはボタンひとつで冷えた食事を温めちゃうという画期的な発明だけど
あれは誰が発明したのだろう

だからこうして至福の時をほくほく楽しんでいる
快速電車は日曜日は運休なのだし
どこかに速く行く必要なんか今更どこにあるのだろう
ところどころ止まる準急電車くらいがちょうどいい
いつか各駅停車の電車になって
そのまたいつかはもうどこへも行かない電車になってしまうのだろうか
それはもう電車とは呼べない、ただの箱である
その中に埴輪と化したわたしが座っているのを想像してしまう
とんだ脱線だ
ああ、いけない、どうやら長湯し過ぎてしまったようだ


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このストーリーに関するコメント

17/05/08 泡沫恋歌

「一家の主婦なのに晩御飯時にいないとはどーいうことだ」これって、うちの母親が父によく言われてた。
昔の男の人は主婦が外で働くのさえ嫌っていたし、外出も許可がいる時代だった。
今の主婦はわりと自由でいいよね。

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