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霜月秋介さん

しもつきしゅうすけです。 日々の暮らしの中からモノガタリを見つけ出し、テーマに沿って書いていきます。

性別 男性
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なんで?

17/04/07 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:4件 霜月秋介 閲覧数:735

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「ねぇママぁ、なんでこの電車、みんな横並びで座るようになってるの?なんか落ち着かないよ」

「そのほうが、多くのお客さんが乗れるからよ。我慢しなさいね」

「はぁい…」


 夜の電車のロングシートに座る母と子。そのまわりにはいろんな乗客が乗っている。スマートフォンに夢中な女子高生、雑誌に夢中な男子高生、これから夜のデートに向かうOL、イヤホンを聴きながら音楽を聴いている青年、小説を読んでいる少女。母の横に座る子供は乗客たちを、好奇の目で見ている。


「ねぇママぁ、あのお姉ちゃんはなんで、嬉しそうに小さな機械ばっかり見てるの?あの小さな機械の中には何があるの?なんであんなに目が赤いの?」

「あの小さな機械の中で、あのお姉ちゃんの友達がいっぱい待ってるのよ。あの機械にとり憑かれると、あんな風に目が赤くなるのよ。気をつけなさいね」

「はぁい…」


「ねぇママぁ、あの眼鏡のお兄ちゃん、さっきまで広げて読んでた雑誌をなんで急に隠すように読んでるの?なんであんなに幸せそうな顔をしてるの?なにをそんなに興奮しているの?」

「邪魔しちゃ駄目よ?あのお兄ちゃん、いま大人への階段を昇り始めてる最中なんだから。いい?ああいうお兄さんのことを、ムッツリスケベっていうのよ。あんな風になっちゃだめよ?」

「はぁい…」


「ねぇママぁ、あのおばちゃん、なんであんなに化粧が濃いの?あのおばちゃん、さっきから手鏡ばっかり見てるよ?あ、おばちゃんこっち見てにらんでる…」

「おばちゃんおばちゃん言わないの!気をつけなさい!今は綺麗な顔をしてるけど、化粧の下には恐ろしい素顔が隠されてるのよ!いい?人間には隠さなければならないことだってあるのよ?そのことを覚えておきなさいね」

「はぁい…」


「ねぇママぁ、あのお兄ちゃん、なんでずっとイヤホンして目を瞑ってるの?その隣のお姉さんも、どうしてずっと本を読んでるの?」

「つらい現実から逃げ出したいからよ。邪魔しちゃだめよ?あのお兄ちゃんとお姉ちゃん、意識はいまこの電車の中にはいないんだから。幻想の世界に入り浸っているのよ」

「はぁい…」


「ねぇママぁ、あのおじちゃん、なんでさっきから新聞広げてるの?新聞ってそんなに面白いことが書いてあるの?」

「あのおじちゃんは新聞なんて読んではいないのよ。自分の目の前に若い女の子が座ってるもんだから、照れ隠しで新聞で顔を覆ってるだけなのよ。あんな内気な大人になっちゃだめよ?」

「はぁい…」


「ねぇママぁ、なんで僕達、この電車に乗ってるんだっけ?これからどこに向かってるの?お父さんはなんで一緒に来ちゃいけないの?」

「そんなこと、あなたはなにも知らなくてもいいのよ。お父さんのことはもう、忘れなさい…」

「はぁい…」


 電車は走る。どこに降りるかも知らされない子供の不安など関係無しに、無情にも…。


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このストーリーに関するコメント

17/04/15 上木成美

拝読させて頂きました。

なんでも辛辣に答えてくれる、でも、大事なことは教えてくれない、ユーモアのある大人なお母さんが面白いです。同じ電車に乗って、この親子のやり取りを見ていたい気分になりました。

17/04/18 霜月秋介

上木成美さま、コメント有難うございます。

子供に教えるにはまだ早いことなどは、うまく誤魔化すしかないですよね(笑)子どもは無邪気なのが一番です。

17/05/03 光石七

拝読しました。
電車にはいろんな人が乗っているので、ある意味社会の縮図かもしれませんね。
無邪気な子供の質問とお母さんの毒舌な答えのやりとりが面白いです。
しかし、ラストにはやるせない気持ちになり……
印象に残るお話でした。

17/05/06 霜月秋介

光石七さま、コメント有難うございます。

社会の縮図!たしかにそうですね。
目的地は人それぞれ違いますが、降りる駅はそれぞれ把握しています。何も知らされてない子供を除いては…

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