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ぴっぴさん

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時空を越えたモノガタリ

17/04/07 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 ぴっぴ 閲覧数:291

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「いやー あん時はたまげたべ」
聴衆からどよめきが漏れると同時に、報道カメラのストロボが激しくたかれた。
世界タイムトラベラーズ・サミットが10年ぶりに幕張メッセで行なわれていて、浦島太郎は日本最古のタイムトラベラーのパネリストとして壇上でスピーチしていた。
数人のパネリスト達の生の声を聞こうとタイムトラベル物を書こうとする作家や、映画監督、評論家などで会場は程よい緊張感に満ちていた。
「オラが乙姫様に貰った玉手箱を開けたとたん、煙がモクモクって上がってきてなぁ」
すると聴衆から質問が飛んだ。
「どんな煙だったんですか?」
「どんな煙かなんてオラがわかるわけないべさ。ただラベンダーの香りがしたべさ」
一部の映画監督が笑った。
「したらなぁ、あれよあれよというまえに爺さんになっちまったのさ」
日本のお伽話のままのオチに不満そうなのは、司会進行のベンジャミンだった。
「全然、数奇じゃありませんね」
聴衆も本物しか持たないエピソードなどを期待していたのに期待ハズレ意外に釣り合う言葉がなかった。
「この話は断じてウソじゃないぞ。近頃はタイムマシンは車だったり、洗濯機だったりしておるが七世紀はそんなもん全くないべさ。」
会場から亀はどうした? やら、息はなぜできるのか? 竜宮といいながら竜がすんでないのはなぜか? など質問が上がる度に浦島は適当に答えて聴衆を煙にまいた。

会場に浦島の一酸化炭素が充満するころ、一人の男が浦島太郎に叫んだ。
「おい! イカサマ野郎! お前の設定は全部このオレの体験のパクリなんだよ!」
「だれだ! オラを嘘つき呼ばわりするやつは!」
「オレは中国の陳という者だ。オレは五世紀に女を助けた。その女は洞庭湖の竜女だった。その竜女の招きで竜宮城に行き、彼女と結婚して幸せに暮らした。しかし年老いた母を残してきたので戻りたいと言うと『私に会いたくなったらこの手箱に向かって話しなさい。ただし、この手箱を開けてはなりません』と言って箱をくれたんだ。どうだ!似ているなんてものではないだろう! この後だってお前の言ったとうり箱を開けて老人になるというオチまで同じなんだぞ!」
会場がざわつきだした。その陳という男が言うことが本当なら浦島太郎は盗作していることになる。そんなあらぬ方向に進みそうになったとき一人の老人が立ち上がった。
「あのー、私はリップ・ヴァン・ウィンクルという者ですが、私の体験はずっと後なので恥ずかしいのですが、私も同じような経験があります。もしかしたら他にも同じような人がいるのではないでしょうか?」
司会のベンジャミンはその提案に会場の数千人の聴衆に向けて同じような経験がある方は登壇してくださいと言った。すると七人の男が不安げにゆっくり登壇した。
「こんなにもたくさんの方々が同じような経験があるとのことなので、どうでしょう? 時間の許す限りその体験を共有しませんか?」ベンジャミンが言った。会場から拍手が上がった。
「では、このサミットを盛り上げてくれましたリップ・ヴァン・ウィンクルさんからお願いします」
「あー、発言する機会をくれました司会のベンジャミン氏と会場の皆様に感謝します。アメリカ出身のリップ・ヴァン・ウィンクルと申します。私は妻がイヤで家に帰らず森にいたところ美しい女が手招きをして私を呼びました。逸話では男になっていますが、本当は違います。浮気の疑いをかけられるのが嫌で男に誘われたと言いました。さて、私の名前を呼ぶ美しい女についていきますと開けた広場のような所に出ました。そこでは今で言うボーリングのようなものがありました。みんなで盛り上がり酒もたくさん飲んだので眠くなって朝起きたら20年経っていて妻も死んでいました」
一部の映画監督が笑った。
その後フィンランドに伝わる妖精や、コーランが原典の話が続いてサミットも佳境に差し掛かったころ浦島太郎が渾身の一太刀を繰り出した。
「今日はオラの話が本当だという証拠を持ってきました。竜宮城の乙姫様に来てもらっています!ではどうぞお入りくだされ!」
「おおー」
会場が一気にヒートアップした。レーザー光線が激しい音楽とシンクロしてスポットライトを誘う。その先にゆるりと揺蕩うように立つ一人の女を映し出した。
「乙姫様―。こっちに来て下され」
手を振る浦島に応えるようにしゃなりしゃなりと歩いて来た。
「ああっ! お前は竜女じゃないか!」陳が叫んだ。
「そう言えば、あなたは森にいた美しい人?」リップが指を指した。
そうやって壇上の全員は女をそれぞれ別の名前で呼んだ。浮気相手が全員集合したようなバツの悪さに女は立ち止まった。
しばらくの間スポットライトに浮き彫りにされていた女は、突然踵を返して出て来たドアから出て行った。

「これは……数奇ですな」ベンジャミンが言った。


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