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あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天野ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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朝目が覚めると、寝台特急の個室に美女がいた

17/04/07 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:8件 あずみの白馬 閲覧数:362

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『今日は、2013年4月7日、時刻は、午前6時30分。寝台特急北斗星、只今、時刻表通りに運転しております』

 車内放送で目が覚め、気がつくと寝台特急の個室の中にいた。

「こ、これはいったい!?」

 目の前には、6〜7歳ぐらい年上の綺麗な女の人が寝ていたが、しかし、僕の驚いた声で目を覚ました。

「ん……? な、なーに? どうしたって言うの!?」

 何が起こったんだと言う感じで彼女も僕を見つめている。

 僕、岡部優希は世に言う鉄道マニア。来年(2014年)には廃線になる江差線に乗るために、この特急に乗っていた。
 昨日は上野駅から一人旅を満喫し、たくさんの荷物とともにB寝台車で寝ていたはずだった。
 ん? そういえばこの女の人、見覚えが……

「もしかして、白岡先生?」
「白岡先生!? どうしたの? 急に懐かしい呼び方して」
「懐かしい呼び方!?」
「だってもう、つきあって3年になるじゃない」
「つきあい……!?」

 23歳になる僕は生まれてこの方彼女が出来たことはない。だが白岡先生は僕とつきあって3年になるという。

「今日はこれから札幌に行っていろいろ見て回るんでしょ。あなた楽しみにしてたじゃない」
「そんな! 僕は江差線に乗りに来たんだけど、函館で降りるよ」
「函館!? 降りちゃうなんて聞いてないけど?」

 何がどうなっているんだかさっぱりわからない。

「先生! からかわないでくださいよ!」
「からかってなんかいないわよ!」

 まもなく列車は函館駅に滑り込む。ぼくは荷物を持ってそのまま列車を降りた。白岡先生は追いかけては来なかった。

 そのまま江差線の普通列車に乗り込み、撮影旅行と勤しむ。

 さっきのは夢だと思いこむことにして、来年限りで見納めになる、キハ40系ディーゼルカーが一両で往復するローカル線の風景を夢中になってデジカメに収めていった。

 ***

 昼過ぎ、僕は白岡春菜先生のことが急に気になりだした。高校の頃の先生で、とても明るく生徒に人気があった。
 なぜつきあっていることになっているのだろう。

 スマホをポケットから取り出して、連絡を取ろうかと思うと、あれ? 僕のスマホに白岡先生の携帯電話の番号がある。
 いつ登録したのだろうか……? 気になって電話してみると、先生が出た。

「あ、岡部くん……、朝はその……、ごめんね」

 なにか申し訳無さそうな雰囲気だ。ぼくは真相を聞きたくなって、白岡先生と会いたくなった。
 そのことを話すと、これから函館まで来てくれると言う。
 夕刻、駅前の喫茶店に二人で入って話を聞いてみると……、

 彼女は、3年間別の男の人とつきあっていて、婚約までしたのに突然別れてしまったらしい。
 傷心旅行に出た矢先、昨日の寝台特急で偶然僕を見つけて、衝動的に個室に入れた。
 朝起きたら、僕と3年つきあっていたことにして、元カレのことを忘れようとした。

「そんなことなら、普通に相談してくれれば……」
「ごめんね。こんなことしちゃって」

 その後、僕たちは一緒に旅をして、東京に戻った後も連絡を取り合い……

 ***

 あれから4年。江差線も寝台特急も廃止され、あの場所には新幹線が走っている。

 僕たちは、ほどなく交際を始め、そのまま結婚、家庭を持っていた。

「春菜、おはよう」
「おはよ。今年のゴールデンウィーク、どこか行かない?」
「そうだなぁ。久しぶりに北海道にでも行こうか」
「いいわね。思い出の場所だし」

 春菜は今も非常勤講師として高校に勤めているが、家庭のこともちゃんとしてくれる、考えてみればもったいないぐらいの奥さんだ。

「それにしても、4年前の朝、春菜がいたときは驚いたなぁ」
「そうね。優希、前の日はすっかり緊張しちゃって、だから、つい、ね」

 え……? 前の日の夜!?

「前の日? 前の日はB寝台で寝てたはずだけど」
「違うわ。上野駅で偶然会って、一緒に個室に入ろうって話になったじゃない」
「あれ? 夜中に春菜がこっそり僕を運んだんじゃなくて?」
「私、そんなに力ないよ。そんなこと出来るわけないじゃない」

 そう言われて思うことがある。函館駅で降りた時、荷物は部屋の中にあった。真夜中に荷物ごと運べば、さすがに乗客に怪しまれるだろう。

「そ、それじゃあ、あの日に一体何が……!?」
「優希の勘違いじゃないの?」

 春菜はそう言って笑っている。だがあの日になにがあったのか、ますますわからなくなっていった。
 そう言えばスマホに、つきあってもいないはずの春菜の連絡先もあった。先生の連絡先なんて普通、いつまでも入れてはおかないだろう。

 僕はあの夜、別の世界に迷い込んでしまったのだろうか……? 春菜の笑みは変わらない。


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このストーリーに関するコメント

17/04/07 あずみの白馬

【写真の出典】
寝台特急北斗星号はWikipedia(GFDL)、江差線はまもさん撮影(CC3.0に基づく表記)

17/04/07 浅月庵

【写真の出典】
寝台特急北斗星号はWikipedia(GFDL)、江差線はまもさん撮影(CC3.0に基づく表記)

17/04/07 浅月庵

あずみの白馬様

拝読致しました。
不思議な世界観に引き込まれました。
真相が気になります、おもしろかったです!

すみません、何かの手違いであずみの白馬の
コメントのコピペを投稿してしまったようです。
申し訳ございません......。

17/04/08 あずみの白馬

>浅月庵 さま
コメントありがとうございます。

真相は……、果たして!? ですね。
不思議な世界観を評価していただきましてありがとうございます。

17/04/08 むねすけ

【写真の出典】
寝台特急北斗星号はWikipedia(GFDL)、江差線はまもさん撮影(CC3.0に基づく表記)

17/04/08 むねすけ

【写真の出典】
寝台特急北斗星号はWikipedia(GFDL)、江差線はまもさん撮影(CC3.0に基づく表記)

17/04/09 まー

ミステリアスな余韻が残るラストですね。
鉄オタの人たちがこのような作品を見るとまた違った楽しみ方ができるのでしょう。
寝台特急の旅とか一度やってみたいものです。

17/04/12 あずみの白馬

>まー さん
ありがとうございます。
確かに鉄オタさんが見たら「◯◯が違う」とか、細かいツッコミどころが満載かも知れません。
寝台特急、数も限られてしまいましたが、私も乗って旅に出てみたいです。

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