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鮎風 遊さん

この世で最も面白い物語を見つけ出したい。 そのために、ひとり脳内で化学反応を起こし、投稿させてもらってます。 テーマに沿った個別物語の他に、いくつかのシリーズものをコツコツと書き続けさせてもらってます。 その主なシリーズものを紹介させてもらいます。  ☆❤☆❤☆ 新シリーズ 『ツイスミ不動産』 __ 2017.07.16よりスタートさせてもらいました。 カサリンとクワガタ野郎があなたが求める終の棲家を紹介いたします。  ☆❤☆❤☆ 『刑事 : 百目鬼 学(どうめき がく)』 __ 2017.05.21 ただ今、27話 __ 1話完結の2000文字推理小説です。この少ない文字数の中で、百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)がいかに事件を解決していくか、その醍醐味を味わって頂ければ、光栄です。 これからも引き続き難しい事件に挑戦して参りますので、よろしくお願いします。  ☆❤☆❤☆ 『漢字一文字の旅』 __2017.04.04 ただ今、連載41__ 漢字にまつわるエッセイです。  ☆❤☆❤☆  『歴詩』 __歴史上の人物になりかわって、その波瀾万丈の生き様の思いを詩に綴らせてもらってます。 本作品については、フォト音(on)小説という形で、you tubeにもUPさせてもらってます。 詳細はこちらHPです。  ☆❤☆❤☆  http://ayukazeyuu.net/index.html  ☆❤☆❤☆                         よろしくお願いします。              

性別 男性
将来の夢 この世で最も面白い物語を見つけ出したい。
座右の銘 Do what you enjoy, enjoy what you do.

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通勤電車同盟 ──刑事:百目鬼 学(どうめき がく)──第26話

17/04/04 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 鮎風 遊 閲覧数:242

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 朝の通勤電車、駅に到着すると同時にサラリーマンたちが押し合いへし合い乗り込んで来る。結果、この6両目の後方部もすし詰め状態だ。
 しかし、ここは異常なほど静か。なぜ?
 例えば部長クラスと思われる中年男性、席に座り、目を閉じたまま身動き一つしない。きっと新企画を練ってるのだろう。
 その隣ではいかにも営業スタッフ風な女性が、接待疲れか太ももまで露わにし、爆睡中。その前ではくたびれたスーツを着た三流サラリーマンがつり革にぶら下がりながらうとうとと夢の中。立ったまま寝るなんて、世の中には器用なヤツがいるものだ。その奥では連結部のドアに持たれ、新入社員らしき若造がゲームに熱中している。
 などなど、つまりここに集いし者たちは通勤地獄内で自分の居場所を探し、この6両目後方に辿り着いた。互いに顔は見知ってる。だがどこの誰兵衛とは知らない。それでも同じ閉ざされた空間で同じ朝の時を刻む縁となった。
 多事多難な一日が今日も始まる。ただその前に好きなように心身を休めておきたい。まるでここはちょっと疲れた人生を生きる人間たちの万華鏡、そんな様相とも言えなくもないが…。
 しかしながらいつの間にか仲間意識が芽生え、今では暗黙のルール『干渉し合わない。不適合者は排除する。他言しない』を共有する通勤電車同盟へと進化したのである。

 駅に到着した。入口ドア付近はラッシュだ。しかし6両目後方は静かに発車を待つ。
 そんな時にこの通勤電車6両目同盟の中へとチャラい男が押し入ってきた。イヤホンからは音が漏れてきて耳障りだ。その上に音楽に合わせて朝から腰を振ったりしている。
 電車は発車した。しかし男の騒々しさには変わりがない。だからと言って周りの人たちは我関せずの態度。そんな時に男は迂闊にも爆睡中のお姉さんの足を踏んづけてしまった。
 美人スタッフはカッと目を見開き、一触即発の事態に。だが女性は動転することもなくバックから赤い札、いやレッドカードを出して高々と掲げた。
 ここからはあ・ら・らと展開していく。全員を守るように前方で陣取っていたちょっと陰のある兄貴がスルスルと男の後方に近付き、腕を首に巻き付けた。そして有無を言わせずぐいと締め上げた。
 男は5秒ばかり悶えたが、ガクッと落ちた。その後連結部へと引きずられ、捨てられた。あとはまるで何事もなかったように、電車は発車し、再び震動音だけの静寂が戻ってきたのだった。

 朝のダイヤを終え、電車には回送の表示が掲げられた。人気がなくなった車内を車掌が急ぎ足で点検していく。そして6両目後方の連結部で口にガムテープを貼られ、首にプラスチックの袋を被せられた死体が発見された。
 百目鬼刑事と部下の芹凛(せりりん)こと芹川凛子刑事が急遽現場へと入る。被害者の身元はポケットにあった免許証からすぐに割れた。定職にも就かず、たかりなどをしてプラプラと暮らす札付きの悪だ。
 芹凛は首回りのあざをチェックしながら、「首締められた時はまだ生きていた。その後口にテープ貼られ、袋被せられ息絶えたようです。複数の者が関わった殺しね」と鋭い。
「犯行現場は満員の通勤電車内、目撃者は多くいるはずだ、さっ、スピード逮捕するぞ」と百目鬼は自信を滲ませた。

 事件から1週間が経過した。しかし進展がない。なぜなら目撃者がまったく現れないのだ。もちろんじっと待ってたわけではない。駅構内の防犯カメラから当該電車に乗車していた者たちをつきとめ、積極的に聞き込みを行った。
 だが、答えは全員「へえ、そんなことがあったのですか」、理由は「私寝てましたから」、「スマホしてましたから」が決まり文句だった。
 一気に解決できると目論んでいた通勤電車殺人事件、暗礁に乗り上げてしまった。
「今日、これで5杯目です」と芹凛から嫌みっぽく差し出されたコーヒーを一口すすった百目鬼刑事、本日一番の妙案が浮かんだのか、鬼の割には可愛い顔をして指示を飛ばす。「アレで、こちらから仕掛けてくれ」と。
 芹凛はわかってる、アレって何ですかなんて訊いても叱られるだけだ。とにかく脳味噌を絞って…、『通勤電車殺人事件に遭遇!』と題し、殺された男の画像を貼り付けてSNSに投稿した。そしてこれが見事に呼び水となった。新たな画像や、なんと犯行時の動画までが次から次へとUPされたのだ。そして一つのキーワードが、それは――通勤電車6両目同盟。
「満員の通勤電車、互いにどこの誰だかは知らないが、毎朝同じ車両で同じ時を穏やかに刻む。そんな平和を壊す者が現れれば、全員結束し、排除したってことでしょうか」
 芹凛がボソボソと本件の本質を吐いた。これに百目鬼は鬼の目をギョロッと剥き、吠えるのだった。
「何が6両目同盟だ、勝手に害虫駆除しやがって。絵は全部そろった、さっ、一網打尽に全員しょっ引きに行くぞ」


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