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スパ郎さん

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つれない

17/03/30 コンテスト(テーマ):第132回 時空モノガタリ文学賞 【 浦島太郎 】 コメント:0件 スパ郎 閲覧数:492

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昔々、ある小さな漁村に海をじっと眺めている男がいました。 彼と同年代くらいの男達は結婚をしていて、漁師の仕事をして魚を売る者やその魚を使い料理をして売る者といった感じで殆どが自立をして逞しく生きていました。
しかし、海を一日中眺めているこの男は子供の頃からどんくさく何をしても周りと同じ様にできずに情けで雇って貰った漁師
の仕事も魚の入ったカゴを一日に三度も転んで海に還してしまった為この小さな漁村至上最速一日で漁師を昨日クビになってしまった。
彼はそんな事を今日も頑張ってと三十歳過ぎてやっと仕事をした自分を朝から玄関で見送る母親には言えなかった。
だから彼は家を出るときは必ず釣竿を持っていく、船で大量に魚を釣ってくると母親に言い残し。

「俺が魚なんてつれるわけないよなぁ・・・・まいったなぁ」
時折、自分の存在を自分自身で確かめる為の作業のようにそう呟きながら、ぷかぷかと浮いているもはや仕掛けた餌などはないウキを見た。
夕日が海に沈む頃になっても彼はずっと海を眺めていた、漁帰りの同年代の男達が「今日も疲れたー」や「少し酒でも飲んでいかないか」などと楽しそうに嫁や娘、息子が待つ家に帰る声を聞きながらも彼はまだ海を眺めていた。    
「浦島だーーーーー!浦島太郎がいるぞーーーー!!」 村の子供達だ。
「やーい!何をやってもダメな浦島ーーどんくさ浦島ーー」 村の子供達の間でも彼は有名人だった、子供達の親が夕飯の時などに彼を笑い話の肴として面白く話すからである。 
子供達からの罵声にも彼はもう慣れていた、無視を貫き通した。             
ゴンっ!と鈍い音が鳴った子供達が投げた物が彼の肩に当たり腰をかけていた岩に落ちた音だ。
「なんか喋れよバーカ!!」 無視を貫き通す彼に子供達は飽き、ケラケラと笑いながら走り去る。
浦島太郎と呼ばれた彼は子供達が投げた物を拾い上げるとなんと大人の足程の大きさの亀だった。

「あの・・・なんか助けて頂いて有難う御座います」 亀は少し罰が悪そうにお礼を言う。           
「えっ・・・あぁ・・まぁ助けてないけど・・・はい」 太郎も罰が悪そうに言う。 
「子供って残酷ですよね・・・俺、昼くらいからずっと投げられて遊ばれてましたよ・・・・」 
「あぁ・・・それは大変でしたね・・・・」 
太郎と亀は岩に座り込んで5分程黙り込んで海を眺めた。 「あっ・・・あの、助けてもらったお礼がしたいのですが」沈黙に耐え切れなくなった亀が少し声を大きくして言う。
「お礼?いやいや・・とんでもないですほんと・・・助けたとかじゃないですから」亀の大きな声に少し驚いた太郎
「いやいやいや、ほんとにこれで海に帰ったら、上に怒られますしお礼させてくださいよー、あっ!お酒とかも沢山ありますし」 大声を出して何かが吹っ切れたのか亀は急にスイッチが入った。
「えっ・・・いや・・・あの僕は酒飲めないですし・・・ほんと大丈夫ですんで」太郎は一緒に酒を飲む仲間などできた事もなく本当は酒なんて飲んだ事もない。
「あー・・・そうなんですか・・・だったら!料理!最高のご馳走を用意しますから!ねっ?ねっ?」
「あの・・すみません・・・最近あまり食欲がなくて・・・嫌な事があったもんで・・・・」太郎は漁師をクビになったショックで全く食欲が湧かなかった。
「嫌な事あったんですか!なら美女!美女と踊って忘れましょうよ!楽しいですよ!そらもうこんなチンケな村じゃまず見ないような美女ですよ!」嬉しそうに手を叩きながらよっよっと岩をクルクル回る亀、ハッとする太郎。 
「あっ!!僕ないですよ!お金!!!仕事もしてないし!ほら・・?今日だってずっとこうして意味も無く海眺めてたし!ほんと勘弁してください・・・・実家も貧乏なんですぅ」泣きながらなぜか許しを請う太郎    
急に泣き出した太郎を見て亀は手を叩く動作を一時停止した動画のようにピタっととめ大慌て。
「いやいやいやいや!!!ほんと違いますって!!!そういうんじゃないですって!!!ちゃんとした店っていうか城っていうかほんとそういうんじゃないですって!」
「でも・・・さっき・・・上がどうたらって・・・・上ってなんですか!?」亀も必死ですが太郎も必死です
「上は・・・あれですよ・・・あまり行く前に教えるなって言われてて・・・すみませんけど」
やっぱりぃぃぃい!と大泣きしながら岩にしがみつく体勢になった太郎の誤解を解く頃には月が真上に来る頃だった。
「浦島さん・・・やっぱり行かないっすか?」
「はぁ・・・なんか・・・今日は・・遅いし・・・怖いし」 
「そうですか・・わかりました・・・まったく、浦島さんつれないですね〜」
「はい、すみませんねつれなくて」 浦島は今日初めて笑った。

おしまい


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