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夢で会えたら

17/03/28 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:1件 ぽん 閲覧数:226

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「起きてください。着きましたよ」
隣に座る女の子に、僕は目覚めさせられた。
僕は慌てて膝の上に広げていた英単語帳をリュックにしまい、小さな声でありがとうございますと言ってそそくさと電車を降りた。

僕の通う男子校は地元じゃちょっと有名な進学校で文武両道を校是としている。実際、進学実績も部活動の成績も優秀だった。とはいえ内実は、勉強組とスポーツ組に分かれていて、本当に文武両道といえる生徒は多くない。いわゆるガリ勉タイプの僕は女性経験ゼロ。母親以外の女性と話すのは久々で、僕にとって今朝の出来事は、炭酸強めのコーラみたいに刺激的で甘かった。
授業中も今朝の女の子のことで頭がいっぱい。英語の小テストも散々な結果だった。夜遅くまで予習したのに。もちろん体育はいつも通りダメダメ。友人たちに言わせると今日の僕は『にやけすぎ』らしい。自分でもそんな気がする。

授業が終わり家路につく。学校近くの駅から家の近くの駅まで一時間。帰りの電車では会わなかった。

考えてみると、なんで僕があの駅で降りるって知っていたのだろう。制服で分かったのだろうか?まあ、いずれにせよ、親切な人だ。
もう電車で寝ることがないよう、早めに床についた。

次の日、小さな期待を持って同じ時間の同じ車両に乗った。しっかりとお礼がしたい。そしてできればお近づきになりたい。髪もしっかりキメてきたし、ひげも剃った。準備は万端だ。男子校に通う生徒にとって、女性は光である。生きるための希望と言い換えてもいい。小学生のときは何にも思わなかったのに。これが思春期ってやつか。なんて考えているうちに電車が発車した。

次の駅。僕は単語帳に目をやりながらも、ドアに全神経を集中させていた。
電車が止まる。ドアが開く。人が入ってくる。誰かが僕の左隣に座った。
僕はばれないように細心の注意を払いながら、左を伺った。

すぐさま確信した。昨日の女の子だ。間違いない。心臓がいつもの五割増しで働く。落ち着け。落ち着け。落ち着け。深呼吸。……よし。

「あの、昨日は、起こしてくれて、ありがとう。助かりました」
しっかりと彼女の方を向いて、言った。
思いの外大きな声が出ていたらしい。彼女は少し驚いた顔をして、困ったように笑った。
あちゃー。外したか?だが、今日の僕は覚悟が違う。
「僕が降りる駅、なんで分かったんですか」
「……みてたんです」
「え?」
どういうことだろう。
「あなたがあの駅で降りるところ何回かみたことがあって、それで分かったんです」
「そ、そうなんですか。てっきり制服で分かったのかと思ってました」
「……あっ、別に、ずっと見てたとか、そういうわけじゃなくって、たまたまです。たまたま」
「親切なんですね」
素直にそう思った。
「あっ、その……、いつも勉強熱心だなって、思ってたんです。その英単語帳、シリーズの中でも一番難しいやつですよね。私も今、英語勉強してるんです」
そう言うと彼女は音楽プレーヤーを見せた。英語の教科書に付いているCDが丸々入っているようだった。
「すごいですね。いつも聞いてるんですか?」
「ええ、まあ。はじめの方は暗記しちゃいました。」
そういって彼女は流暢な英語を披露した。ネイティブ並みの発音に僕は舌を巻いた。ペーパーテストでしか役に立たない僕の英語力とは一線を画していた。
「めちゃくちゃうまい!海外に住んでたこととかあるんですか」
「はい。実は5歳までアメリカにいたんです。小学校に上がるタイミングで日本に帰ってきて、それからはもうずっとこっちです」
なるほど。そういうわけか。海外での生活なんて僕には縁が無い。とはいえ彼女の美しい発音からは、間違いなく地道な練習が感じられた。
「一回英語忘れちゃってたんですよ。もう一回話せるようになりたいって思って今頑張っているところなんです」
そう言う彼女はとても生き生きとしていた。

その後もいろいろな話をした。趣味の話、家族の話、そして彼女が苦手な数学の話。わからないところを教えてあげたりもした。

「そろそろだね。いろいろ教えてもらっちゃった。ありがとうございました」
彼女はそう言ってペコリと頭を下げた。
「もう到着か。あっという間だったよ」
いつの間にか二人とも砕けた口調になっていた。
「じゃあ、またね」
「うん、また」
後ろ髪を引かれる思いで僕は電車を降りた。彼女が降りる駅はもう一つ先だそうだ。
朝から気分がいい。今まで生きてきて最高の朝だ。もしかして、夢なんじゃないか?
そう思った僕はなんとなく頬をつねった。

……ん?……

……あれ……痛くないぞ……

……おかしいな

なんでいたく

ない




ゆめ?
 


――「起きてください。着きましたよ」
隣に座る女の子に、僕は目覚めさせられた。
髪はキマってるし、髭も無い。


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このストーリーに関するコメント

17/03/28 ぽん

初めまして。ぽんと申します。
面白いサイトを見つけた!と思い、早速、人生初の小説を書いてみました。
率直に言って、書くのは楽しかったです。また同時に、決まった文字数の中で表現する難しさを体験できました。
自分でお話を作ってみると、実際の作家さんは本当にすごいなあと実感します。
是非ともまたコンテストに参加したいと思います。

それから、感想や、厳しいアドバイスお待ちしております!
最後までお読みいただきありがとうございました。

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