あずみの白馬さん

成人済 アイコンは天乃ゆうりさん作成(無断転載を禁じます) 自分なりの優しい世界観を出せるように頑張ります。 好きな作家は飯田雪子先生です。若輩者ですが、よろしくお願いします。 Twitter:@Hakuba_Azumino

性別 男性
将来の夢 旅立つときには、ひとりでも多くの人に見送られたい。
座右の銘 「これでいいのだ」

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追憶

17/03/27 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 あずみの白馬 閲覧数:526

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 いつもあなたは笑顔で私を出迎えてくれた。 それなのに……



 私の地元は、山あいにある、ちょっと昔の日本ならどこにでもありそうな、のどかな村。

 小学生の頃、桜の咲く季節、私はあなたに出逢った。

 それからはいつも、あなたと一緒に学校に通った。

 中学、高校も、同じ方向だった。だからあなたとはいつも一緒だった。

 いつもあなたは、笑顔だった……、と思う。

 数年前、私は都会の大学に行くことになった。あなたは地元から離れられない。だから、お別れになってしまった。

 けれども、寂しさをひとつも見せず、あなたはいつもの笑顔で私を見送ってくれた……、はずだ。

 それから年に二度ほど実家に帰った時は、変わらぬ微笑みを浮かべて出迎えてくれた……、と思う。

 大学卒業が近づいた頃、突然、あなたの寿命があと一年と聞かされた。

 思わずあなたに逢いに行った。けれどあなたは、寂しい顔はひとつも見せなかった……、気がする。

 当たり前にいた、あなたがいなくなってしまう。そんな残酷な現実が、あなたを特別な存在に変えた。

 そして、別れの日を迎えた。私は地元に帰り、たくさんの人たちとともに、あなたを見送った。最後まで悲しい顔を見せずに、あなたは逝った……、そう信じている。



 久しぶりに戻った故郷。あの日と同じ桜の木の下、あなたは静かに眠っている。

 役目を終えた駅に、少し錆びついた一両の気動車が保存されている。それはもう、笑顔を見せることも、動くこともない。

 彼には、結局何もしてあげられなかった。私は思わず涙ぐむと、都会へと戻るバスに乗り込んだ。

 ……、フィアンセと一緒に。

 ごめんね。こんな私を、貴方は許してくれるかしら?


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