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デヴォン黒桃さん

「黒桃将太郎」名義でKindle作家として活動。「デヴォン黒桃」名義で猫面師としてアート活動も。人間ドラマや人の感情に興味があり、書きたい物をジャンル問わず書いております。「黒桃短篇集」発売中昭和浪漫のスコシばかり怪異なお話、アナタの脳髄へソット、注入サせて頂きます。 心の臓のヨワい御方は、お引き返し下さい。 精神に異常をキタしても、責任が取れませぬ故。http://amzn.to/2jPBe4m

性別 男性
将来の夢 りっぱなおとな
座右の銘 悔しいけど感じちゃう

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世話焼き

17/03/25 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:0件 デヴォン黒桃 閲覧数:365

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 今日は学校の遠足。山登りで疲れて汗ばんだ肌に、涼しい風。
 遠足の楽しみの一つ、お弁当の時間。皆が色とりどりのお弁当箱を開けては、自慢し合う隅っこで、くすんだ半透明のタッパーを隠すようにして開けていた男子がいた。
 ソノ男子は、両親が離婚しておばあちゃんと二人暮らし。
 今日の遠足のお弁当も、恐らく自分で作ったか、おばあちゃんが作ったかだろう……
 私は、なんとなく気になって、ソノ男子を見ていた。
「……ばあちゃん……いつか殺す……」
 よれたタッパーの蓋を開けたと同時に、ソンナ物騒なセリフ。おばあちゃんが作ったお弁当がソンナに気に入らなかったんだろうか。
 私は、木陰に移動するふりをして、ソノ男子の後ろに立ってお弁当を覗いた。
 ソコには、戦争漫画でみたような、一杯に敷き詰められたご飯。上には焦げた数切れのベビーハムの輪切りが並べてあり、開けられたフタに、昆布の佃煮がミットモナク張り付いていた。
 
 次の週、学校では、先日行われた健康診断の結果が発表された。 
 私は特に問題なし。件のソノ男子だけが先生に呼ばれて教卓の前へ行った。
「おい、チャントご飯は食べてるか?」
 先生が、プリントを見ながら、頭を撫でた。
「でも、ばあちゃんが……」
 ソノ男子は、ソレっきり黙りこくった。
 先生もソレ以上は言わずに、席へ戻るように促した。
 あとから聞いた話しだが、ソノ男子は健康診断で「栄養失調」と診断されたそう。この飽食の時代に珍しい、と噂好きの女子の間で盛り上がった。
 
 給食の時間、私はなんだか可哀想に思って、自分の給食のチーズとプリンをあげた。
 ああ、何で、私ってコンナに世話焼きなのかしら。
 ソノ男子は黙って受け取って、一気に食べた。チーズはポケットに入れていた。
「ソレ、今食べないの?」
「……夜、食べる」
「夜ご飯、無いの? 朝ご飯は?」
「夜ご飯は無い……朝は配達の牛乳が来る……あとは、ばあちゃんが……」
 ソコまで言うと、ソノ男子は食器を片付けに席を立った。

 放課後、帰り道でソノ男子を見つけた。
「ね、さっきの話しさ……おばあちゃんがご飯作ってくれないの?」
 ソノ男子は歩く早さを変えずに答えた。
「作らん……ばあちゃん、いつか殺す」
「ソンナに、おばあちゃんのことが嫌いなの?」
「好かん……いつか殺す、殺してやる」
 私は、ソノ男子の言葉にドキドキしてしまって、立ち止まった。
 ソノ男子は、ソンナこと気にもせずにスタスタと歩き去っていった。
「そうか……本当に殺したいのか……」
 私はドキドキが治まらないまま、家に戻った。
 
 ソノ夜はナカナカ寝付けなかった。私は、ソノ男子に恋をしたのだろうか、イヤ、ソンナ筈はない。
 じゃあ、コノ胸のドキドキは何なんだろう……
 眠れないまま、親の目を盗んで、納屋へ忍び込んだ。ソシテ除草剤を盗み出して、ランドセルに入れた……
 次の日、ソノ男子を呼び出し、ランドセルに入れてあった除草剤を渡した。
「ね……本当におばあちゃんを殺したいなら、コレ、飲ませなよ」
「……コレ、毒?」
「うん。確か、牛乳は配達で来るんでしょ? ソノ中に混ぜちゃいなよ。おばあちゃんが飲んだら……殺せるんじゃないかな?」
 ソノ男子は、ジッと私の目を見て、除草剤を受け取った。 
 私は、その間ズット、ドキドキしていた。ズット。

 翌日も、ソノまた次も、ソノ男子は普通に学校に来ていた。ソロソロおばあちゃんが死んで、お葬式なのかな? ナンテ、ドキドキしてたのに……
 私は痺れを切らしてソノ男子に聞いた。
「ね、まだ飲ませてないの?」
「飲ませとらん……明日飲ませる」
「ホント? ホントに明日飲ませる?」
 ドキドキしながら念を押す。
「……明日……飲ませる」
 ソノ男子の答えを聞いて、今まで感じたことのない痺れを体の奥に感じた。

 次の朝、私は待ちきれないでソノ男子の家まで行った。
 ソシテ、ソノ男子が家から出てくるのを待った。
 玄関が開いて、おばあちゃんが見送りに出てきた。
 振り返りもせずに、歩き出すソノ男子。
 おばあちゃんも、配達の牛乳を取り出して家に戻っていった。
「おはよ、ねえ、牛乳に毒入れた?」
「……入れとらん」
「え、何で? ズット殺したいって言ってたのに?」
「ばあちゃん、年寄りやし、もうすぐ死ぬ。毒飲ませて殺すのは可哀想や」
 私はガッカリした。ソノ男子は、本当に殺したかったんじゃあないんだ。
 
 私は、今来た道を走って戻った。ソノ男子の家へ。
 今サッキ、おばあちゃんが取り出した牛乳には、ソノ男子が失敗した時のコトを考えて、私がタップリ除草剤を入れたんだ。取り返さなければ、おばあちゃんがホントに死んでしまう。

 ああ、何で、私ってコンナに世話焼きなのかしら。


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