糸井翼さん

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17/03/24 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:0件 糸井翼 閲覧数:290

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失敗してもいいって人は言いますね。
うちの親もそうでした。
失敗してもいいんだよ、トライするまでの過程が一番大事だ、なんて言ってね。
まあそういう部分もあるのかなと思いますよ。ズルして成功したって、何も得るものはないし、後ろめたいでしょう。
でも。
現実はどうなんでしょうね。
成功した者だけが大きな顔をして、活躍していますね。成功体験談を好きなように語れますね。
努力は報われる。とかね。
誰よりも成し遂げる思いが強かった。とか。
見てるとね、結局は成功したという結果がすべてを作り出している気がするんですよ。
歴史上の勝者とかもそうですよね。天下を取ると偉大とされて、負けた人は悪者扱い。全員とは言わないですけどね。
そういうものです。違いますか?

私の友達はすごく真面目な人で、毎日10時間以上勉強して、志望校に行きたいと思っていました。
彼女の目指していた大学には、有名な現代文学の教授がいて、その人の下で勉強をしたいと言ってました。
彼女は性格も良い人で、私も勉強を教えてもらったりしていました。
私はこの人と同じ学校に行きたいとぼんやり思いました。でも、諦めていました。彼女ほど努力はできないことはわかっていましたから。勉強はきらいなんですよ。それに、そこまでのモチベーションはありませんでした。

試験当日は雪で、手がかじかむ寒さでした。
彼女は教室で私にカイロを貸してくれました。彼女の表情は、穏やかではあったけれど、緊張がにじみ出ていました。あれだけ強く行きたいと思っていた志望校、その受験の日の人の気持ち、わかりますか。私には想像もできない。
問題は例年よりも難しいもので、終わってからあちこちで、ヤバかった、とか、終わった、なんて声が聞こえてきました。
彼女に、難しくなかった?って聞きました。
悲しそうに笑って、落ちたかも、って。本当に悲しそうで、私は目を逸らしました。

私の結果はなぜか合格でした。
私がやる気のなさそうに勉強してるのを見て散々嫌みを言っていたお母さんは、コロリと態度を変えて、信じられない、すごいね、と笑っていました。お父さんも、まあ女の子なら他の偏差値の低い大学でも別に悪くはない、なんて言っていたのに、合格を自分のことのように喜んで、親戚に電話しまくっていました。
私はむしろ、親の喜び様についていけず、苦笑いという感じでした。
少し落ち着いて、彼女のことが気になりました。彼女の結果は恐ろしくて聞けなかったけど、向こうから連絡がないことでなんとなくわかりました。彼女は結構頻繁に私に連絡をくれていたので、合格していたら、連絡をくれたでしょう。

学校で何となく話して、不合格を知りました。卒業してから、私はしばらく連絡をとれなくなり、お互いに離れていってしまいました。

学校で、進路指導の先生から体験談の執筆を依頼されました。本当は嫌でした。だけど、断る理由もなかったから。
決して努力家でも、優等生でもない私の文章が、学校の進路指導の資料に載ってしまいました。まるで、学校代表のように。
何が起こるかわからないので、油断しないように、と最後に加えました。努力した彼女でも失敗した。努力は平気で嘘をつくんだ、そういう私なりの小さな抵抗です。
誰も気づかなかったでしょうけどね。


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