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どようびさん

おかしな物語を書きます。

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将来の夢 小説家
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くるくるホットケーキ

17/03/21 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:0件 どようび 閲覧数:232

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 いつだったかホットケーキは回って食べるべきだと考えたことがある。
 お皿に乗っていたそれがふと、月に見えたのだ。それなら私はそれを食べることで月を欠けさせていく存在。月が欠けるのは地球が回るからで、じゃあ今それを目の前にして私が回らないわけにはいかないと昔考え付いた。
 そして今数年振りにホットケーキを目の前にして考えることはいつぞやのそれと全く同じだった。
 前に座る夫に続き一口分、ホットケーキを切り分ける。それをフォークに突き刺し、窓から空を見る。
 朝で、遮蔽物無く空の藍が目に写された。雲とのコントラストも確認されず、派手に絵の具をぶちまけたように疑い無い青一色だった。
 ふと席を立つ。
 そして、自分の考えに従って地球よろしく回ってみる。
 手にはホットケーキの欠片。
 すると、
「あ、れ」
 宇宙へワープしていた。
 どうやら本当に私が地球になったらしい。
 遠くを見ると銀河が私を取り巻いていた。
 体が浮く体験は初めてで、回っている感覚はあるものの体が回転してだんだん左右上下が分からなくなってくる。
 持っていたスプーンを放すと、もうどこかへ行ってしまった。
 暫しこの浮遊感を楽しもうとして、あることに気付く。
 当然のことながら息ができない。
 苦しい。
 当然自衛が働いて空気を求め出す。
 どうすれば地球に戻ることができるのか少し模索して、ふと回るのを止めるとあっさり地球に帰ってこられた。
 入り口と出口の鍵が同じだと成る程便利である。
 ここは地球だと確信を持って立ち上がる。
 しかし、そこは私の知る星でなかった。
 土地に存在する全ての物体が荒廃していた。どうやら地球へ戻るのに失敗したらしい。どこか、知らない星にワープしてしまっていた。
 どうしようかと歩き出す。
 そして少しして先程と似た違和感に気が付く。
 息ができない。
 地球と他の星とではあまりに大気の成分が違うからそれは当然のことでもあった。
 この星は私が息をすることを許可しない。
 膝から崩れ落ち徐々に意識が朦朧としてくる。
 自然と手が伸び、苦しさから逃れようとする。
 それでも地球よりは息苦しくなかった。あの星はあまりに物が潤沢で、人がいすぎる。呼吸するのが少し困難であった。何も無い方がかえって気楽でもあった。
 そこで、目が覚める。
 朝食中に睡魔に襲われ、ホットケーキにフォークを刺したまま寝てしまっていた。
 夢とは違い、失敗して焦げの目立つそれを食べ終える。
 少し空の様子を見ようとガスマスクを付け外に出ると見事な灰色が空を独占していた。
 ××××年、人類は環境の開発に失敗し大気汚染を続けてしまっていた。その結果誰一人まともに息など出来やしなかった。それを悲観した夫は地球に代わる星を探そうと宇宙に出て、飛行に失敗し灰となった。夫は一人が好きだったから今頃私の夢に出てきたような何も無い星にでも灰が流れ着いたのだろうか。さぞ呼吸がしやすそうである。
 この世界には、上手にホットケーキを焼いてくれる夫も、絵の具みたいな青空も、済んだ空気も存在しない。灰色の大気と、人間の喧騒に濁る空間しか無かった。
 当たり前だ。夢とは無い物を見るものだから。


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