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アシタバさん

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タヌキ電車

17/03/20 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:2件 アシタバ 閲覧数:254

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 通勤ラッシュの喧騒が過ぎたのは数時間前で駅を行き交う人々の足取りはのんびりとしていた。ホームで一人の青年が電車を待っている。青年は先程から近くにいる人々にチラチラと盗み見されていた。
 盗み見は失礼な行為だ。皆、解っている。けど、つい見てしまうのだ。青年はそれ程に見目麗しい。
 ホワイトブロンドの髪の毛、南国の海のような青い瞳、スラリとした身体つき、女性も羨む白い肌である。美形の外国人だった。青年は周りの視線に気づいているのか、いないのか、ぼうっとしていた。
 やがて、電車が到着し、ドアが開くと、青年が車内に足を踏み入れた。
 すると、声がした。
「ポンポコ」
 青年の前にタヌキが二本足で立っている。動物のタヌキ。それがポンポコと流暢に日本語を操っているのだ。見れば車内に人はいない。代わりにタヌキが何匹も乗っていた。
 邂逅したタヌキはつぶらな瞳で青年を見つめる。青年もまたタヌキを見つめた。どちらも動かないので写真のような光景になった。しびれを切らしたのは電車だ。扉を閉めて走り出した。
 青年が首を傾ける。タヌキもつられて首を傾けた。
「何してるポコ」
 一匹のタヌキがのしのしと歩いて近寄ってくる。
「にいちゃん、人が乗ってるよ」
 二匹は兄弟のようだ。体格差がある。体の大きい兄タヌキが青年に突っかかった。
「お前。どうやってこの電車に乗った? 妖術で人間は乗れないはずだぞ」
 青年はまた首を傾け、さらには両手を上げて、よくわからないというジェスチャーをとる。
「こいつ外人だ。日本語わかんないんだよ」弟タヌキが訴えた。
「だとしても、何で平然としてんだコイツ。タヌキが喋ってんだぞ」
 兄タヌキは喋る自分を棚に上げ、おかしな奴だと青年を非難した。そして、前足を組み、ぴしゃりと言い放つ。
「とにかく、タヌキ電車の存在を知ったからには生かしてはおけねえポコ。緊急事態だ。どん兵衛。真っ直ぐお山へ帰還しろ」
「ポンポコ」
 電車から声がした。アナウンスではなく、車体を震わせて声を発したのだ。電車の速度が一気にあがる。
「驚いたか? タヌキ電車は何を隠そうタヌキが電車に化けているんだ。妖力のない人間にタヌキ電車は見えないポコ。おまけにタヌキ専用車だから、混まない、痴漢もない、Suicaもいらない、山から街へ乗り換えなしで1本。超便利ポコ」
 超便利ポコ、と弟タヌキも繰り返す。
「その目的はなんだと思う?」
 兄タヌキが青年に問いかけた。言葉が通じているかは関係ない。無知な人間を馬鹿にして楽しんでいるような物言いだった。タヌキ電車は人の科学力を嘲笑うかのような猛スピードで線路を疾走している。
 ゆれる車内。
 青年の前にいる兄弟タヌキは電車にゆられてゆらゆらと、意地の悪い笑みを浮かべた。
「捕らえた人間は鍋にするのが一番だ。でもお前は綺麗な顔をしているからペットにするのも悪くない。どうしてやろうかポコ」
「ポンポコ」「ポンポコ」「ポンポコ」
 いつの間にか両足立ちのタヌキ達に囲まれていた。興奮しているのかタヌキ達からは獣の匂いが濃く漂い、口から鋭い歯をチラつかせている。
 すると、初めて青年の口が開いた。拙い日本語を聞き取ろうとタヌキ達が一斉に耳をピクピクさせる。
 聞こえたのは
「レアモノミツケマシタ」
 次の瞬間、地球の重力が役割を放棄した。体がフワリと浮き上がる。爆走していたタヌキ電車は線路から引き剥がされ、風船のように宙へと舞い上がった。
 ポンポコー! タヌキ達が絶叫した。
 車内はてんやわんやの大騒ぎ。宇宙空間にいるかのごとくタヌキ達がプカプカ浮遊している。すっかり逆さまになった青年がタヌキを一匹抱っこしている。彫刻のような顔の口だけを器用に動かした。
「ボクウチュウノデンシヤオタク。チキュウノメズラシイデンシヤホシイ」
 タヌキ電車の上空には銀色で流線型の巨大な何かが浮かんでいた。そこから出る謎の光がタヌキ電車を釣り糸のように引っ張っているのだ。その絶望的な光景を、タヌキ達は車窓から唖然として眺めていた。
 もう万事休すである。タヌキ達が前足で十字架を切った時、タヌキ電車が叫んだ。
「緊急脱出ポコ」
 煙があがるとタヌキ電車は消え去り、タヌキ達はすかさず空中で鳥に化けた。そして、素早く方々へと散ったのだった。間一髪、未知なる脅威から逃れたのである。
 一人残された青年だけが巨大な未確認飛行物体に吸い込まれて、消えた。
 未確認飛行物体のなかは地球のセンスとはかけ離れており、そこで青年はすぐさま地球でいうスマホのようなものを手にして調べごとを始めた。アレはなんだったのかと考えていた。
 やがて青年は日本古来の答えにたどり着く。
「タヌキニバカサレタ」

 一方で山に帰ったタヌキ達は言った。
「今度はタヌキUFOやるポコよ」


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このストーリーに関するコメント

17/03/21 まー

羨ましい限りですが、いい意味で想像力が爆発してますね。展開の仕方などぐいぐいと読ませる作品だと思いました。

17/03/21 アシタバ

まー様
いつも暗中模索でやっていますが、「ぐいぐいと読ませる」と言っていただき、とても嬉しかったです。コメントを励みにしていきたいと思います。お読みいただきありがとうございました。

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