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しーたさん

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トロイメ・トレイン

17/03/20 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 しーた 閲覧数:224

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 彼女は夢を見ている。綺麗で、孤独な夢を。
 真っ暗な、何もない病室。視界の端で、カーテンが静かに揺れている。首を向けると窓が開いている。のっそり起き上がって窓に近づくと、窓の向こうにぼんやりと輝く道が続いている。彼女は一歩、足を踏み出した。
 夜空に向かって道を歩いていく。しばらくして、道は途切れた。眼下には、暗闇の中に広がる見知った街。辺りには輝く星が散りばめられている。吹いた風が頬を撫でる。髪を揺らす。夜空の中で音を立てて笑う彼らは、きっと自由そのものだった。
 途端、一際大きな風が彼女を包んだ。
 思わず目を閉じて、次に目を開けた時、目の前には大きな列車が停まっていた。
 扉が開く。不思議な引力に引かれ、彼女の身体が車内に飲み込まれる。
 見回してみるが、車内に特別変わったところはない。彼女以外に人もいない。手近な席に着くと、発車のベルが鳴り響いた。
「すみません、切符を拝見」
 どこから現れたのか、帽子を深く被った大きな男が近づいてきた。彼女の目をしばらく見つめて、
「確認が取れました。長旅お疲れ様です。ゆっくりお休みください」
 彼女は頷く。
 男は続けて、
「ああ、遅れましたが自分はこの電車の車掌です。困ったことがあれば声をかけてください。なお、この電車は星の輝きを電力に変えて動いているため墜落の心配はございません。ご安心ください」
 墜落したところで、ですけれどね、と、車掌は静かに笑う。彼女もつられて頬を緩めた。
 車掌がいなくなり一人になった彼女は、窓の外に目を向けた。窓の外では、星たちがきらきらと様々な色の光を放ちながら、夜空を照らしている。よく見てみると、一つ一つ表情が異なっている。心配そうな顔。楽しそうな顔。ほっとしたような顔。怒っているような顔。笑っているような顔。泣いているような顔。つまらなそうな顔。それぞれに想いがあって、だから綺麗なのだろうと彼女は何となく思う。
 一筋の涙が目から溢れた。
 理由は、彼女にはわからなかった。





 彼女自身に目を向けてみる。
 身体が少し薄くなっている。
 両の足が消えかかっている。
 しかし、彼女はそれに気付かない。
 ただ、遥か遠くの星に想いを馳せる。
 電車に揺られながら、夜空に溶け込んでいく。

 しばらくして、車内は再び無人になった。





 命を終えた乗客を乗せ、電車は今日も星空を駆けていく。






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