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一ノ瀬 冬霞さん

一ノ瀬 冬霞(イチノセ ユキ) ひっそり活動中。

性別 女性
将来の夢
座右の銘 適(切)当(然)

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疑問符の忘れ物

17/03/19 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 一ノ瀬 冬霞 閲覧数:214

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  【初恋の欠片】

     【?】

【過去の夢】

        ……etc.



午前一時。終着駅に到着した最終列車が格納庫へ向かう為に動き出した。
それを確認した駅員が駅舎の見回りをしていると、ホームに転がる疑問符の忘れ物【?】を発見した。

(【上司への愚痴】よりはましか……)

苦笑いを浮かべつつ、駅員は【?】を拾い上げて事務室へと歩き出した。

銀河電鉄の遺失物倉庫には年間を通じて多種多様の忘れ物が大量に集められるのだが、この時期特に増えるのが

【?】と【上司への愚痴】

の二つである。
年の瀬に消費量が増えるアルコールが一つの要因とされているが、はっきりとした原因は現時点で解明されていない。

【?】に関しては、忘れたと気付いた時点で自動的に落とし主の手元へ戻っていくのだが、【上司への愚痴】に関してはそう簡単にはいかない。

落とし主が判明すると銀河電鉄側から連絡を入れるのだが、運悪く本人以外の人物が最初に対応した場合、必ずという程トラブルへと発展する。
最終的には落とし物の連絡をしてきた銀河電鉄がそもそもの原因だ、として苦情が寄せられる事も少なくない。

【上司への愚痴】の内容にもよるだろうが、他人に見られる前に回収して連絡を入れているのにこれでは担当者もやりきれないだろう。皮肉なものだ。

……それにしても。
手にした【?】を眺めて駅員は思う。

(最終列車に乗客はいなかったのに、誰が落としたのだろう?)

何か釈然としない。
微かに過る疑問を抱きながら事務室の扉に手をかけた時、見回りをしていたもう一人の駅員が線路上を指差し慌てた様子でこう言った。


「あそこに感嘆符【!】が落ちてるぞ!」


その言葉に駅員ははっとした。
乗客がいないのなら落とし主は列車の運転手ではないのか。

急いで線路に降り立つと、確かに【!】が転がっていた。拾い上げて確認すると【?】と特徴が似ている。どちらも運転手のもので間違いないだろう。


「しまった!手遅れだ!」

列車が向かう格納庫
へ視線を移すが時すでに遅し。



――ドーン※。.::・°☆



止まるという事を忘れた列車はそのまま格納庫へ突入した。と同時に、それはそれは美しい金管楽器の旋律と七色の光が方々へ飛び散った。

【?】と【!】。
これらを同時に落とすのは実に危険だ。人間として生きていく為に必要な心を失ってしまった、と言えば分かりやすいだろうか。

今回、運悪く【?】と【!】の落とし主が同じ人物であると気付くのに時間を要してしまった。
そのため列車の運転手は、帰宅後食べる予定だった愛娘手作りのシチューを頭に思い浮かべていた時に突然、夜空に輝く星の仲間入りを果たした。



「――これで八人目か。
また監理局からお叱りが来るよ……」

「まあ良いじゃないか。
夜空に星が増える、ってのも風情があって」





 知らぬ間に大切な物、落としていませんか【?】
 忘れ物にはご注意を【!】
 


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