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こあらさん

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ちゃんとお祝いできなくて

17/03/16 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:0件 こあら 閲覧数:175

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今年のお母さんの誕生日には、私が美味しい料理を秘密で作ってあげる作戦をたてた。
毎日布団にもぐって、計画を立てる。メニューはハンバーグ、作り方は何度も復習した。五時半くらいに作り終わったら、次はテーブルを飾る。六時に帰るお母さんを、リビングに連れて行ってびっくりさせるんだ!流れを頭の中で確認しながら、眠りについた。

いよいよ来たこの日。友達に捕まって遅くなってしまった。走るとカタカタ背中でランドセルが鳴る。
「おつかい?えらいねぇ」スーパーの人に褒められて、へへっと笑う。ちゃんとひき肉もパン粉も買えた。
ランドセルの横っちょにつけた鍵で、玄関を開ける。お母さんが帰ってくるまでに仕上げなきゃ!ちょっと計画が崩れたけど、まだ大丈夫。

えぇっとまずは玉ねぎだ。包丁を握り、一呼吸。実は一人で料理をするのは初めてなんだ。だけど家庭科の授業でも上手に作れたし、お母さんのお手伝いも時々はしている。気合をいれてみじん切りをはじめた。お母さんのみじん切りより、ちょっと大きい気もするけどいっか。次は茶色になるまで丁寧に炒める。あめ色にすることはちゃんと予習済み。いい色になってきた。
ここまでできたら、あとは材料を加えてこねるだけ。こねるのはやったことあるし、安心だ。

ガチャっと冷蔵庫を開けて、あ!と声がでた。
牛乳がない!しまったなぁ、今から買いに行く時間はない。
卵とパン粉を分量通りに入れてから、ちょっと考えて水を入れることにした。

あ、あれ。またまた私は焦ってしまう。タネがまとまらない。やっぱり水を入れたのが失敗だったかなぁ。パン粉が残っていたから加えてみた。コネコネ。
はーよかった、丸まるくらいの固さになんとかなった。ちょっとべチャットしてるけど、まぁいいか…。
なんとか出来たタネを丸めていく。ポンポンと右手左手交互に叩くように投げる。あー面白い!一個目はいい形に出来上がり。ハンバーグっぽい、私なかなかやるなぁ。

二個目もポンポンポン…。
わ!!調子にのって投げつけていたら、べちゃっと床に落としてしまった。あー、これで一個分少なくなってしまう
涙が出そうになるのを我慢して、拾って捨てる。大丈夫だよ、まだタネはある。お母さんに二個あげて私は一個でいいじゃん。もう一度集中。あとは無駄にできない。落とさないように丁寧に丸めた。

リビングの時計をのぞくともう五時四十分!計画ではテーブルに取り掛かっていたはずなのに。仕方ない。まずはこのハンバーグを仕上げることだ。フライパンに並べて火にかけると、じゅうと良い匂いがしてくる。

よっと!ひっくり返す時、ぽろりとかけてしまった。この前習った分数を、どこか冷静に思い出す。三分の二欠けたハンバーグ、これは私のにしよう…お母さんには綺麗なのを食べてほしいもん。

「早く焼けろ〜」本には弱火とあるけど、強火のまんまフタをした。お母さんが帰ってきちゃう、ゆっくり焼けるのを待ってなんかいられないよ!ここまで来て、やっとふうとひと息つく。

「あー!」なんとお米を炊くのを忘れていた。急いで炊飯器をセットする。間に合わないよぉ。さすがに涙がこぼれてくる。
鼻をすすりながら、フライパンのフタをあけると、今度は焦げ始めている!慌てて弱火にする。ぎりぎり食べられそうだけど、黒いなぁ。フライパンの端に置いた一個だけは、なんとか無事だった。
竹串で刺すと透明な汁が出てきて、出来上がり。一応できたけど…。ため息をついて火を消した。

ガチャと鍵を開ける音がして玄関に飛んでいく。「ただいまー、あれ。どうしたの」私は、まだ靴をはいたままのお母さんに抱きついた。

「お母さん、ごめんね。ご飯まだだし、牛乳ないし、焦げたし、落としたの」
小さい頃みたいに、ぐちゃぐちゃに泣いた。せっかくお母さんの誕生日なのに、台無しにしてごめんね、私、ちゃんとお祝いできなくてごめんね…。

「ハンバーグ作ってくれたんだ!ありがとう!」
台所で黒くなったハンバーグを見てお母さんは喜んでくれた。泣いてしまった恥ずかしさと、嬉しさでへへっと私も笑った。あったかい内に食べよう、ご飯もまだ炊けてないけど、お母さんがそういうのでハンバーグだけ食べることにした。

「いただきます」どきどき。お母さんが一口目を食べる。もちろん、いちばん綺麗にできた生き残りのハンバーグだ。
「おいしい!」
お母さんは泣いているように見えた。ケチャップとってくるね、そう言って台所に取りに行った。

「よかった、美味しいだってさ」顔がニヤニヤしてしまう。私も焦げた方のハンバーグを、一口ほおばった。


ん?味がない??
あ、塩コショウも入れ忘れていた。失敗しっぱい!!
ケチャップを取って来たお母さんと、今度は一緒に大笑いした。

失敗ばかりの、忘れられない誕生日。お母さんおめでとう。


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