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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
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終着駅は始発駅でもある

17/03/16 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 海見みみみ 閲覧数:247

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 ゴロウが目覚めるとそこは大きな駅でした。たくさんの電車が走っています。しかしただの電車ではありません。電車は空を飛んでいました。
「あ、ああ?」
 ゴロウは死んだようににごった目をしながら、絵具のついた顔をこすりました。
 美術部から逃げだし、テキトーな電車に乗ったところまでは覚えています。しかしその間の記憶がぬけ、気づくとゴロウはこの不思議な駅に立っていました。

「ヨウコソ、夢ノ駅ヘ」

 そこにとつぜん機械のような声が聞こえてきました。声の主は服装から駅員であることがわかります。ゴロウと同じ年ごろの女性。ゴロウはその駅員に見覚えがありましたが、だれなのか思い出せませんでした。
「ここ、どこ」
 ゴロウがつっかえながら尋ねると、駅員は説明を始めます。
「コチラハ夢ノ駅。ミナサンガ夢ヘ向カウタメノ駅デス」
 夢へ向かうための駅、それは面白い。ゴロウはこの駅員の話を聞いてみることにしました。
「電車、どこ、行く?」
 ゴロウが一台の電車を指差します。その電車は空を飛び、虹の線路を走っていました。
「アチラノ電車ハ好キナ人ト結バレタイ。ソウ願ッテイル方々ガ乗車サレテイマス」
「終着駅、着けば、結ばれる?」
「ハイ。大半ノ方ハトチュウ下車サレマスガ」
 駅員の話を聞き、ゴロウはより興味深く思いました。
「将来の夢、かなえてくれる駅、あるか?」
「ハイ、ゴザイマス」
 駅員は平然と答えました。対してゴロウの中である想いが生まれていきます。
「その駅、行く電車、乗りたい! オレ、画家、なりたい!」
 ゴロウが駅員につめ寄ります。
「駅員カラ切符ヲ購入サレタラ電車ニ乗レマス。オ客様モ切符ヲオ求メデスカ?」
 ゴロウは無言で頷きます。

 ゴロウは昔から人と話をするのが苦手でした。どうしても言葉が上手く出てこないのです。
 そんなゴロウにとって、絵を描くことは自分を表現する唯一の手段でした。コミュニケーション手段にして将来の夢。絵とはゴロウになくてはならないものなのです。
 しかし最近、ゴロウはカベにぶつかっていました。高校の美術部に入ったのですが、先輩に目をつけられ『バカには絵は描けん』と暴言をはかれ、イジメられているのです。
 それがどれだけくやしくて、心の底からさけびだしたくなったことか。
 だからゴロウは美術部から逃げだし、なにも考えず電車に乗ったのでした。

「ソレデハ少々失礼シマスネ」
 そう口にすると、駅員がスマートフォンのようなものでゴロウの写真をとりました。それから画面を見て「アッ!」と声をあげます。
「スミマセン。オ客様ニハ夢ヲカナエル切符ヲオ売リスルコトガデキマセン」
「そんな、なんで!」
 オレやっぱりバカだから、夢をかなえる資格、ないのか。そうゴロウは思い、悲しみで胸が痛くなりました。
 しかし次に駅員が口にしたのは、意外な言葉でした。

「オ客様ハ『画家ニナル』トイウ夢ノ始発駅ニスデニオラレマス。ソノタメ切符ハオ売リデキマセン」

 ゴロウはその言葉の意味がよくわかりませんでした。そんなゴロウに駅員はおだやかな口調で語りだします。
「オ客様ハスデニ『画家ニナル』トイウ夢ヲカナエラレテイマス。【絵ヲ描コウト思ッタラ、ソノ人ハスデニ画家デアル】ツマリハソウイウコトデス」
 駅員の言葉を聞き、ゴロウは考えこんだ後、急にふき出し笑いました。
「そうか、オレ、もう夢、かなえてたか」
「ハイ。終着駅ハ始発駅デモアルノデス。チナミニ名声ヲ得ル駅ヘノ切符ハオ売リデキマスガ、イカガイタシマショウ」
「いや、いらない」
 ゴロウの目に、今までなかった希望に満ちた光が灯ります。
「切符、なくても、自力で、道、切り開く。そう、覚悟、した」
「ソレハ素晴ラシイデス」
 駅員の言葉を聞くと、ゴロウは意識をゆっくり失っていきました。

「……ロウ、ゴロウ!」
 聞き覚えのある声がします。ゴロウが目を開けるとそこは電車の中で、先ほどの駅員が女子高生の姿をしていました。
「駅員、さん?」
「なに言ってるの、私よ」
 その言葉で彼女が駅員ではなく、同じ美術部の部員であるサヤであることに気づきます。サヤは世話焼きな性格で、どうやらゴロウのことを探しに来てくれたようでした。
「ここ新宿よ? 終着駅まで居眠りしてるなんて、のん気なんだから」
 サヤはあきれたようにつぶやきます。
 しかしその時、ゴロウはある言葉を思い出しました。
「終着駅は、始発駅でもある、か」
 それからゴロウはまっすぐサヤを見つめ、こう告げました。
「オレ、プロの絵描き、なる。ここ、終着駅で、オレの、始発駅。イジメ、にも、絶対、負けない!」
「そう」
 サヤが静かに、しかしとてもうれしそうにつぶやきます。

 こうしてこの日、一人の立派な絵描きが始発駅に立ちました。


おしまい


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