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家永真早さん

ブロマンスやロマンシスが書きたい。 何気ない日常や、日常の中の非日常を書くのが好きです。 http://ienagaworks.php.xdomain.jp/

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虹のふもとで待ってる

17/03/15 コンテスト(テーマ):第131回 時空モノガタリ文学賞 【 電車 】 コメント:0件 家永真早 閲覧数:314

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 重く動かなかった私の体は軽くなり、見えなかった目も聞こえなかった耳もすっかり良くなった。
 私は、ひとつの風呂敷包みを抱えていた。中には滅多に食べられなかったシーバと缶詰とささみとかつおぶしにカニカマスライス、それからマタタビ、水が入っていた。今すぐに食べたかったけど、まだ今は食べちゃいけない気がして我慢した。私だって我慢ができるのだよ。
 私は後ろ足だけで立ち上がった。今ならどんなことでもできる気がする。そのまま歩くのだってできた。私の前足には紙切れが一枚くっついている。
 紙切れに気づいた時、目の前に二本の線が表れた。その線に、木の板が何本も交差している。
 ガタゴトガタゴト。遠くからそんな音が聞こえた。音の方から、大きな箱が走って来る。よく家から見た、電車と言う乗り物みたいだった。
 電車は私の前で停まった。ドアが開いて、黒い影が出て来る。それは下僕にも似ているし、私の同胞にも見えた。
「切符拝見します」
 影は言って、私の前足にくっつく紙切れを見た。
「虹の橋までですね。ご乗車ください。間もなく発車します」
 開いたドアから、私は電車に乗り込んだ。すでにたくさん乗っていたけど、空いてる席はあったから、私は近くの席に座った。
「虹の橋経由、天の国行き、発車します」
 影が言うと、電車は動き出した。
 窓の外には花畑が広がっていた。気が付かなかったけど、私も花畑に立っいてたみたいだった。
 途中、電車は何度も停まって同胞や天敵や獲物も乗って来た。だけど争ったり狩りをしたい気分にはならなくて、みんな静かに乗っていた。
 目的地までがあまりにも長くて、私はシーバを開けた。同胞がたくさん寄ってきて、少し分けてやった。
「君たちも虹の橋に行くのかい?」
 私は訪ねた。
「いや、私は天の国だって言われたよ」
「俺も」
「私も」
 黒いのと縞と三毛が次々に答える。
「そうか。私は虹の橋だから、そこでお別れだね」
 私は次に缶詰を開け、同胞たちと食べた。電車の中には食べ物を持っている者といない者がいて、私たちと同じように分け合う姿があちこちにあった。
「次は、虹の橋、虹の橋です。降り遅れませんよう、ご注意ください」
 かつおぶしを舐めている頃、影が言った。
「私は降りないと。じゃあ、いつかまた会おう」
「ありがとう」
 私はささみとカニカマスライスとマタタビと水を置いて、空っぽの風呂敷だけを持って電車を降りた。
「お達者で」
「ありがとう」
 黒いのと縞と三毛は、何回もお礼を言った。
「さあ、あちらが虹の橋です。今日はよく見えますね。皆様があの橋を渡る時、切符を持って来てくれる者がありますから、それまでこちらでお過ごしください。では、ご乗車ありがとうございました」
 電車を降りた私たちに影は言って、ドアを閉めた。電車は私たちを置いてゆっくり走り出す。
 虹の橋を渡る長い長い電車を見送った後には、二本の線と木の板は消えていた。
 そこは暖かいところだった。私は大きなあくびをした。さてさて、何をして過ごそうか。先に着いていた者たちは、遊んだり眠ったり好きなことをしているようだった。天敵同士でも、獲物も、喧嘩をしている姿はまったく見えない。
 私は、やっぱりまずは昼寝かな。お気に入りの場所を探そう。
 何かだけが足りないけど、ここは結構良いところみたいだ。


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