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上村夏樹さん

はじめまして、上村と申します。 公募に挑戦するワナビです。突発的にショートショートを書きたくなる面倒くさい生き物。 最近、初めて買って読んだ詩集で泣きそうになるという、やはり面倒くさい生き物。 物書き、そして読者のみなさん、よろしくお願いします!

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テストでは高得点を取らないほうが褒められる

17/03/14 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:0件 上村夏樹 閲覧数:324

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 とある日の放課後、高校に入学して最初の中間テストの結果が配られた。
 うちの学校は、全教科の答案用紙の返却後、テスト結果が一枚に集約された紙が配布される。どの教科が何点だったかその一枚でわかるので、親に渡してテスト結果を報告しろと担任は言っていた。
「こんなテスト結果、母さんに見せられねぇっての……はぁ」
 嘆息し、その紙に視線を落とす。
 英語83点。古典80点。世界史75点。現代文97点……そこで読むのをやめ、教室の天井を仰いだ。
「なんで『こんな点数』を取ってしまったんだ……」
 自慢にはならないが、俺は中学時代から勉強ができなかった。テストではいつも平均点以下。赤点を取ったことも一度や二度じゃない。現代文の選択問題でヤマ勘が当たり、高得点を取ることも稀にあるが、基本的には悪い点数を叩きだす。
 やはり一夜漬けのテスト勉強では無理か。期末は計画的に勉強しないと。
 ……などと毎回反省はするのだが、反省を活かせたことは一度もない。いつも勉強せずに遊んでしまい、テスト前日に徹夜で勉強して散々な結果を迎える。今回も多分に漏れずこのザマだ。俺は典型的な勉強しない学生だった。
「母さんに激怒されるだろうなぁ……」
 このあと俺を待ち受けるであろう、地獄の説教タイムを想像しながら教室を出た。


 帰宅後、リビングに母さんを座らせて、テスト結果の書かれた紙を見せた。
 紙を受け取った母さんの手は小刻みに震えている。やばい。あれは怒りによる震えかもしれない。
 母さんは紙から視線を外し、真っ直ぐに俺を見た。反射的に肩がびくんと跳ねる。
「雄二。あんたって子は――」
 ほらきた。怒られる。説教タイムの始まりだ。
 そう、思ったけれど。
「やればできるじゃない! さすが私の自慢の息子だわ!」
 意外なことに、母さんは嬉しそうに俺の背中をバシバシ叩いた。
「や、やればできる子? 俺が?」
「そうよ。すべての科目で70点以上じゃない。苦手な理系科目も全部70点を超えているのは偉いわ。しかも現代文は97点。もう言うことなしよ」
 母さんは満面の笑みで俺を褒めちぎった。
 おかしい。あの母さんが、この点数を見て怒らないわけがない。
「母さん。その紙、ちょっと貸して」
「はい、どうぞ。でも汚さないでよ? 額縁に入れて部屋に飾るんだから」
「いやいや。それは大げさだろ」
 冗談を交わしつつ、紙を受け取った。
 紙には俺の名前と科目名、そして点数のみが書かれている。母さんが何故俺を褒めるか、皆目見当もつかない――。
「あ……!」
 これだ。これのおかげで、俺は母さんの地獄の説教タイムから逃れられたのだ。
「今日の晩ごはんは、雄二の好きなオムライスにしようかしら。テスト頑張ったご褒美よ」
 母さんは弾むような声でそう言った。
 ……もしも母さんが真実を知ったらと思うとゾッとする。
「ありがとう、母さん」
 たぶん、俺は今、ぎこちない笑顔を浮かべているのだろう。
 その日の晩、食卓にはオムライスが並んだ。母さんに嘘がバレたときのことを考えると、恐怖で味なんてわからなかった。


 時は流れ、期末テストの結果が配られた。
 中間テストと同様、俺は一夜漬けでテストを乗り切った。おそらく、70点以上は固いだろう。
 自分の席で、たった今配られた紙を見る。
 英語81点。古典90点。世界史76点。
 その次の教科を見て、俺の視線は止まった。
「あ……あぁぁっ……!」
 俺の手は震えた。母さんによる地獄の説教タイムが確定したからだ。
 忘れていた。俺は現代文の選択問題で、ヤマ勘が冴えるときがあるということを。
 そして……今回のテストで、俺のヤマ勘は絶好調だったようだ。記号を適当に選んだだけなのに、ことごとく的中させてしまったのだろう。
「なんでこんなに高得点を取ってしまったんだ……!」
 泣き事を漏らし、現代文のテスト結果をまじまじと見つめる。

 現代文162点。

 これで学校のテストが200点満点だってこと、母さんにバレてしまう。それはつまり、中間テストの結果が、どの教科も半分の点数も取れていないことが明らかになるってことだ。
 それに加えて、今回のテスト結果……現代文以外、100点以下という散々な結果である。
「……母さん、鬼のように起こるだろうな。まぁ自業自得なんだけどさ」
 独り言ち、自嘲気味に笑った。
 嘘をつくのはよくない。
 今回の失敗で、そんな当たり前のことを学んだのだった。


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