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マナーモードさん

推理小説が好きです。童話も書いてみたいと思っています。

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クリスマスプレゼント

12/11/13 コンテスト(テーマ):第十九回 時空モノガタリ文学賞【 クリスマス 】 コメント:0件 マナーモード 閲覧数:2031

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そこは駅ビルの地下の食料品売り場の隅で、あまり人がいない場所だったわ。
「これを腰に巻いてください」
 突然後ろからそう云って、男のひとが、グリーンのセーターを差し出したの。
「……」
「スカートが切れてるんですよ。あなたの」
「そ、そうなんですか?」
 驚いたわたしは目の前が暗くなるのを感じたわ。
「うしろ側です。早く、みんなに見られちゃいますよ」
「は、はい。あ、ありがとうございます」
 わたしは茶色のミニスカートだったから、慌ててその好意に甘えたわ。
「多分、痴漢でしょうね。悪い奴がいるんですね」
「そ、そうですね」
 わたしは凄く怖いことだと思ったわ。貧血で倒れそうな気がしたわ。
「送って行きましょう。ぼくの車に乗って行ってください」
「でも、いいんですか?」
 驚いたわ。わたしの眼に映ったその男性は、超イケメンよ。映画俳優のようだったの。
「交番の前で待っていてください。ぼくの車はグリーンです。そのセーターと同じ色です」
 男のひとは行ってしまった。クリスマスケーキを持っているわたしは、大勢の人の流れを横切り、指定された交番の前へ急いだ。
 五十メートル手前でグリーンの車が目に入ったわ。その車を見て、わたしは嬉しかったの。背が高くてすてきなあのひとが、助手席側のドアを開けて待っていたわ。
「急いで帰りたいでしょう。どうぞ」
 わたしが車の中に入ると、男のひとは外からドアを閉めてくれたわ。それから急いで運転席に座ったの。
「ぼくは谷中宏和です。あなたは?」
「玉山です。セーターをありがとうございました」
 谷中さんはセーターを受け取ると後ろの席に置き、住所を聞いてから車を発進させたわ。
「ぼくは二十八で、独身で、恋人がいません。玉山さんは?」
「……二十四で、独身で、わたしも恋人がいません」
 そのとき、夕方の街にはきれいなイルミネーションが溢れていたわ。
「あなたのような可愛いひとが……驚きました。あなたはお仕事されてますか?」
「ええ。自動車会社の工場に勤めています。この車のメーカーのOLです」
「驚きましたね!ぼくはこの車のデザインの一部を担当しました。同じ敷地内の、別の建物で働いていたんですね……じゃあ、やっぱり」
「え?どうしたんですか」
「玉山さんは、絵を描いているひとではありませんか?」
「はい。先週から、食堂の作品展に出品しています」
「あのきれいな花の絵を観たとき、感動して涙が出ました。だから、名前を記憶しました。成美さん。そうでしょう?あの絵を、売ってください!ぼくの部屋に飾らせてください」
 それを聞くとわたしは涙が止まらなくなったわ。
「売るなんて、そんなことできません。プレゼントします」
「クリスマスのプレゼントとして、頂けるんですね。あなたにも、神様にも感謝します」
 谷中さんはメールアドレスが印刷されている名刺をくれたわ。
「明日も逢ってください。絵のお礼として、あなたに何かプレゼントをさせてください」
「そんな、いけませんよ。大事なお金をわたしなんかのために……」
「大事なお金だから、あなたのために使いたいんです」
 家に着くとすっかり暗くなっていたのに、今までになく私の気持ちは明るくなっていたわ。わたしも、神様に感謝するべきだと思った。でも、あのひとは違うことを云ったの。
「どんな奴かな……痴漢に感謝するなんて、初めてですよ」


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