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冷雨さん

物語だったり。書くのが好きなその辺にいそうな奴。

性別 女性
将来の夢
座右の銘 蛇に噛まれて朽ち縄に怖じろ

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水泡に帰す

17/03/11 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:1件 冷雨 閲覧数:141

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人間、必ずしも失敗するだろう。
実際に、今日。私は失敗したと後悔をしている。
学校に行くために前日に準備した体操服を家に忘れたのだ。気付いたのはバスに乗ってから。
定期だから、降りて取りに行こうかとも考えた。
しかしそれでは間に合わない。
何故なら先ほど、起きる時間が遅くなったからだ。いつも乗っているバスより2.3本は遅い。
これを下りればおそらく遅刻だろう。

この時の自分は、遅刻して教室に入ったときのあの視線を受けるより、体育に出れません。と告げてほのぼのと体育を見守るということを選択していた。
酷い罪悪感に苛まれながら、バスを降りた。
電車に乗るころにはイヤホンから流れる音楽をただ必死に頭に叩き込んでいた。
何があるわけでもない。無意味なもの。

遅刻は免れるだろう時間だが電車を待つ数分がもどかしかった。
そして電車は遅延しているという。
これで遅刻をしてクラスの痛い視線を体中に受けながら、体操服を忘れた愚かな生徒としてクラスからも教師からも稚拙で有害物質としての評価を得るのだろう。

日頃、死にたいと思っていた私は一歩前へ出る。また一歩前へ出ると電車が風を連れて前を遮る。
あと三歩だったのにという後悔と、愚かな行為をする自分を蔑みながら電車に乗り込んだ。
電車に乗って二駅目、携帯に着信が入った。
連絡手段であるアプリのクラスグループに誰かが問いかけた。

『今日、女子の体育って理論だっけ〜?』

うざったい顔文字を付けて送られる。

『あれ、そうだっけ〜?』

うざった顔文字を連ねてやる自分もうざい存在なのだろう。

『そうだよ〜理論だよ!!』

既読数は18。答えるの私を含め2人。質問者はスタンプで感謝を伝える。
私は罪悪感に苛まれていた数分前を恨んだ。
体操服なんて必要なかった。

陽気なまま学校へ向かい遅刻を免れる。
明るく振る舞って挨拶を交わして教科書を用意する。

いつものメンバーが机のところに来て、いつもの愚痴を言う。

「今日の物理宿題あったよね〜。」
「え〜。まじで。やってなぁい。」

そこで気付いた。
私は昨晩、宿題に手を付けた。それがどうだ。
手元にはノートどころか教科書もない。

「どうしたの〜?」
「物理全部忘れたわ。やっべぇ〜」

口調を合わせる。我ながらバカみたいでうざいものだ。
先ほどまで安堵していた自分が憎い。
今日は着いていないと思いながら、一日を過ごした。
物理の授業では先生が宿題の存在を忘れ、点検せずに授業が終わった。
教科書は隣の人に見せてもらったし、ノートもルーズリーフがあった。

部活も辞めた今では放課後は暇で。施錠までは図書室に居る毎日だ。
そして、帰り。
私は、ついてない一日だったな。と早い思いかえりをしていた。
失敗したと後悔しては、よかったと安堵して。すぐにその安堵した時間を恨む。憎たらしい程に。

家に帰ってもすることがない。
勉強だってする気が無いから、風呂を済ませすぐに寝た。
夕飯すらどうでもよかった。学校の準備だって面倒だった。
このまま永遠に醒めなければいいのに。と願いながら眠った。これも日課だ。


次の日、誰もいなくなった家で、慌てて着替えて家を出た。
明るくなりかけた空を見て、太陽の位置が中途半端な位置にあるのがわかった。
腕の時計を見つめながら、このままサボってしまおうか、と考えた。

いつも乗ってるバスとは違うし、家を出て走って、すぐ来たバスに乗ったため、息を整えながら空いた席に座る。
やっとの思いで携帯を開いて時間を見つめて、アプリを開いた。
欠席するときや遅刻するときにいつもあった上辺だけの心配の言葉が無いことに気付いた。
とうとう見放されたか。と後悔を抱きつつ、ゲームを開く。
曜日のクエストを開くと、そこには予想していたクエストはなかった。

そこでようやく私は失敗に気付いた。

これをここまで読んだ人ならもうわかるだろう。
今日は休日だったのだ。


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このストーリーに関するコメント

17/03/18 クナリ

何でもないはずのことで翻弄されたり、自己嫌悪に陥ったり、気分が上向きになったと思ったらまたへこんで、やがて気を持ち直すこと自体が億劫になったり……といった経験を持つ人なら、多くが共感しながら切なくなるのではないかと思える作品でした。
終わり方も、「なーんだ」と笑えるというよりは、寂しげな微笑が浮かんでくるようなわびしさがあり、印象的でした。

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