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みやさん

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枝垂桜の木の下に

17/03/11 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:0件 みや 閲覧数:492

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その日の朝の通勤途中の駅に向かう道にある公園の人集りを見て、圭介は何事かと思った。人集りは50人程は集まっていて、いつもの穏やかな通勤風景とは違いザワザワとした空気が漂っていた。そしてその公園にある枝垂桜の木にゆらゆらとロープの様な紐でぶら下がっている人の後ろ姿が人集りの隙間からチラリと見えた時に、圭介はギョッとした。その後ろ姿が圭介の妻の結花の雰囲気にとても似ていたからだった。

首吊り自殺?若い女性だぞ、人々は口々にそう言って、誰かが、早く救急車を呼べ!と叫んだ。圭介は恐ろしくなり、駅への道を急いだ。

いつも通りの通勤電車に駆け込み乗車をして、圭介はそんな筈が無い…と自分で自分に言い聞かせた。あの枝垂桜の木にゆらゆらとぶら下がっているのが妻の結花である筈が無いのだから、と。

圭介が妻の結花と結婚したのは今から約半年前の事だった。元々女にだらしがない圭介は、結婚してからも浮気ばかりを繰り返し妻の結花を泣かせてばかりいた。泣いて浮気を責める結花に圭介は、お前に女としての魅力が無いから俺が浮気するんだ、お前が悪いんだ、と反省するどころか妻である結花にその浮気の責任転換をする始末だった。

昨夜も日付が変わってから自宅に帰宅した圭介を結花が責めたてた。
「お前もうるさい女だな。そんなに嫌ならこの家から出て行けばいいだろう」
結花が本当に家を出ていく筈が無いとの確信があっての圭介の言葉だったのだが、泣きながら本当に家を出て行こうとする結花に圭介は逆上した。結花は自分がどれだけ女遊びを繰り返しても、自分を愛し続けてくれる、と自分勝手に思い込んでいたからだ。

今朝目にした枝垂桜の木にぶら下がっていた女性の後ろ姿…髪は結花と同じ位の長さで、洋服も昨夜結花が着ていた服によく似ていた。結花であるはずがない、馬鹿馬鹿しい…と思いながらも圭介は仕事中に不安になり、何度も結花の携帯に電話をしてみたが、この電話は現在電波が繋がっていません、と無機質な電子音のメッセージが聞こえてくるだけだった。

その日圭介は珍しく定時で仕事を終えて浮気相手の誘いも断り、真っ直ぐに家路を急いだ。家の最寄り駅に電車が到着し、朝に枝垂桜の木に人がぶら下がっていた公園に近づくと、朝の騒ぎが嘘の様に公園はいつも通りに穏やかだった。

自殺や殺人事件が起きればしばらくその場所は立ち入り禁止になるのではないか?よくテレビドラマで見る立ち入り禁止のテープが貼られていて…と圭介は訝しんで、人がぶら下がっていた枝垂桜の木に近づいた。そこへ犬の散歩をしている老人が通りかかったので、圭介はその老人に尋ねた。

「今朝ここで、この木に人が…人の死体がぶら下がっていたみたいなんですが…」
「あー、あれ、今朝の?びっくりしましたよ、すごい人集りで」
「死んでたんですか?」
「警察が来てすごい騒ぎだったけど、あれ人間じゃなくてマネキン人形だったみたいですよ。人騒がせな話しですよね。誰かの悪戯だったみたいだけど、悪趣味にも程があるわ」

それを聞いて圭介は安堵した。確かにマネキン人形を木に吊るすなんて…悪趣味だ。
「まぁこんなに細い木じゃ、首吊り自殺するのも無理よね」
そう言って老人はお家に帰ろうね、と犬に話し掛け圭介に軽く会釈をして去って行った。確かに老人が言う様に、この枝垂桜の木は細く、首吊り自殺をするには不向きな木だと圭介は思った。やはり自分の考えは間違っていなかった…

自宅に辿り着き鍵を開けると家の中は真っ暗で、結花はまだ帰っていなかった。当たり前だ。こんな家に帰って来る筈が無い。こんな浮気ばかりを繰り返し、家庭を省みない男の元へなど。そう思いながら圭介が寝室の扉を開けると、ベッドに結花が横たわっていた。

横たわっている結花の髪を圭介はそっと撫でた。その髪は驚く程に冷たかった。
「結花…ごめんな。本当にごめん。浮気ばかりしてお前の事悲しませて…悪かったと思ってるよ。でも、だからって家を出て行こうとする事ないだろう?お前が本当に家を出て行こうとするから、だからカッとなってお前の首を絞めて…」

圭介ははじめ、逆上して殺してしまった結花の死体を首吊り自殺に見せかけて近くの公園の枝垂桜の木に吊るす事を思い付いたが、枝垂桜の木の幹が余りにも細い事に気付き、その計画を断念したのだが、先程会った老人の言葉を聞きその計画を実行しなくて良かったと安堵したのだ。けれどこの結花の死体をどう処理すれば良い?

桜の木の下には死体が埋まっているー

この有名な言葉通りにやはり結花の死体はあの枝垂桜の木の下に埋めるのが妥当だろう。深夜遅くにあそこに埋めに行こう、と圭介は決心した。だがさっきすれ違った犬が死体の匂いを嗅ぎつけたら…


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