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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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化け猫奮闘記

17/03/10 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:11件 石蕗亮 閲覧数:754

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 時は江戸の頃
百物語が流行し巷では化け猫の存在は広く認知されていた。
猫を飼う際には「飼うのは〇年」と最初に猫に告げ、それを過ぎると野良にしたり、化ける前に妖力の元であろう尻尾を切ったりなんて風習もあった。
 そんな折、江戸を騒がせる怪事があった。
騒動は瓦版で瞬く間に広まった。
『怪奇、人面猫現る!魚売りが魚を奪われる!その姿は身体は猫だが顔は人間だった!』
『化け猫現る!裏路地から可愛い鳴き声。しかし現れたのは身体は人間、顔は猫!
驚いたのはその顔の大きさ!人間の身体に小さな猫の首から上が付いていた!』
噂は人間だけでなく猫たちの間にも広まった。
「まったく、どこのバカ猫だろうね!住みにくくなって迷惑ったらありゃぁしない!」
「ただでさえ猫嫌いな人間からは命さえ狙われかねない生活してるのに!」
「お前たち普通の猫はまだいいさ。俺たちみたいに人間に化けて人間として生活している化け猫や猫又にとっちゃぁ洒落にならん大問題だぜ!」
猫たちは口々に不満をぶちまけた。
そこへ親分猫の猫又が現れた。
「犯人猫は判ってる。こいつだ」
首根っこを咥えられ引きずり出されたのは最近この辺に住み着いた新米化け猫だった。
「みんな、すまねぇ」耳をぺたんと伏せて謝るが猫たちの怒りは収まらなかった。
「おい、みんな。問題はそこじゃねぇ。実はこの騒動のせいでこの辺一帯の猫を駆逐するってぇ話が猫嫌いの人間の間で出回っている。俺は今からこいつを連れてそいつらの処へ行き、神通力で誤魔化してくるから。お前らは俺の指示があるまで寝床から一歩も出ずに隠れていやがれ」
親分猫又はそう言い渡すと「いくぞ」と新米化け猫に促した。

「親分すまねぇ」
「うるせぇ。いいから歩け」
「どこまで行くんだい?」
「1里先の町までだ」
「え〜、1里も歩けねぇよ」
「化けろよ化け猫!猫の足より人間の足の方が1歩でけぇだろうが!」
「そっかぁ」
「ったくよぉ。お前はなんでそんなに抜けてるかねぇ。よく化け猫になれたもんだ」
「それがさぁ、おいら、成仏に失敗しちまって」
「はぁ?」
「三途の河を渡り損ねて溺れて流されて、気が付いたら現世で化け猫になっておりやした」
「っかぁ〜。なんて間抜けな所以だい。恨みも心残りもなく化け猫になったんかい!」
「はぁ、心残りと言えば、おいら雌猫とくっついたことなくて」
「もういいわ」親分はげんなりしながら人目のつかない長屋の裏路地に入ると人間に化けた。新米化け猫も一緒に。
「ねぇ、親分。化け猫と猫又の違いってなんですかね?」
「あん?お前一旦死んでるから肉体無いだろ。死んで化けて出たから化け猫。
俺は猫の肉体を持ったまま霊威をもって進化したから猫又。尻尾が二股に分かれてるから猫又。猫の経立だな」
「経立って?」
「歳いった動物が人語を解し神通力を操れるようになったものを指してそう言うんだよ」
そうこう話しているうちに猫嫌いの人間達が集まっている屋敷についた。

「さて、ここからは猫に戻るぞ」
「へい」
2匹はひょいと塀を飛び越え縁の下へ潜り込むと中の様子を伺った。
「町の到る所に毒入りの餌をばら撒けば一掃できるでしょう」
人間達の物騒な会話が聞こえた。
「どうしよう親分!」化け猫は声を上げたが人間語だった。
訝し気に親分が振り向くとそこには人面猫の姿があった。
「ばっか!お前!」親分が突っ込むと同時に「曲者か!」と人間が叫んだ。
「猫の鳴き声で誤魔化せ!」
親分に言われ化け猫は大声で鳴いた。
「にゃお〜ん」人間の顔のまま。
人間の声で鳴く化け猫に親分は泡を吹いて倒れそうになった。
「素で鳴けよ!素の猫でよぉ!ったく、逃げるぞ!」
親分の掛け声で2匹は縁の下から飛び出した。
バサァ
そこに網が投げかけられ2匹は捕まってしまった。
「どうしよう親分」
「いや、お前肉体無いからね!」
化け猫の間抜けっぷりに親分は切れ気味に突っ込んだ。
「よいしょ」と網をすり抜けた化け猫は人間を説得しようと再び人に化けようとした。
しかし慌てたもんだから顔だけ猫のままだった。
なんとか親分を離してもらおうと話し掛けたが顔が猫のままだったもんだから
「ニャ〜オン」と可愛い猫撫で声しか出なかった。
それが一層奇怪さを際立たせた。
人間達は気を失う者、腰を抜かして狼狽する者、逃げる者、様々だった。
化け猫はなんとか納得してもらおうと更に猫撫で声で優しく話しかけながら人間達ににじり寄った。
顔だけ猫だと気付かずに。
「た、助けてくれー!」
叫ぶ人間に親分が話しかけた。
「猫を殺せばこいつのような化け猫が増えるぞ」

人間は猫を殺さないと約束し、代わりに親分は猫又の里からこの間抜けな化け猫を出さないと約束し手打ちとした。
「この手際、失敗なんだか成功なんだか」
親分猫又はげんなりと呟いた。


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このストーリーに関するコメント

17/03/10 のあみっと二等兵

拝読させていただきました。
まるで落語のような愉快なやり取りが楽しく、時代背景とも違和感無くリンクしていて面白かったです。
素敵な作品を有り難うございました。

17/03/10 海神

拝読致しました。
失敗だらけの化け猫が面白おかしく描かれていて良かったです。

17/03/10 石蕗亮

のあみっと二等兵さま
初めまして。お読み頂きありがとうございます。
楽しんで頂けましたら幸いです。
書きながら頭の中では化け猫が動いておりました。
絵心があれば描きたいくらいです。

17/03/10 石蕗亮

海神さん
コメントありがとうございます。
ツッコミの猫又が居て確立できる化け猫の失敗の数々だったと思います。

17/03/15 白虎

拝読しました。
失敗するにも程があると吹き出しながら読みました。愛嬌のある猫でついつい許したくなりました。
面白かったです。

17/03/18 クナリ

掛け合いが大変面白く、愉快に読ませていただきました。
本当に、江戸〜近代の日本は、恐ろしいものも可笑しいものも、怪異との相性がいいですよね……!

17/03/28 石蕗亮

白虎さん
コメントありがとうございます。
文章だから可愛げもあるかもしれませんがマンガや実写にしたら気色悪い画にしかならないと思いますよ。たぶん。笑
脳内変換でうまく楽しんで頂ければうれしいです。笑

17/03/28 石蕗亮

クナリさん!
コメントありがとうございます!!遅くなって申し訳ないです。本当に。
怪異はいいですよね〜。私の実体験の怪談なんて突っ込み満載ですもん。
怪異は怖いだけじゃないとこがいいですよね!まぁ、可笑しいと怖いは紙一重なとこもありますが。あとは書き手の演じ方次第ですよね。怖い話に突っ込みいれるの大好きです!

17/04/03 霜月秋介

石蕗亮さま、拝読しました。

化け猫のあまりの間抜けっぷり、呆れるを通りすぎて感心しました(笑)結局は化け猫のここまでかという失態が成功に繋がってしまったようですね(笑)面白いコメディでした。

17/04/11 石蕗亮

霜月さま
コメントありがとうございます。
失敗というマイナスイメージも度が過ぎたら笑えるはずと思い描いてみました。
ご笑納ありがとうございます。

17/04/11 石蕗亮

霜月さま
コメントありがとうございます。
失敗というマイナスイメージも度が過ぎたら笑えるはずと思い描いてみました。
ご笑納ありがとうございます。

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