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本宮晃樹さん

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宇宙人はどっちだ?

17/03/10 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:2件 本宮晃樹 閲覧数:508

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「宇宙人がきてるんだ」城島は〈ヒョウロク玉〉――肺胞を酸素で満たす飴ちゃん――を口へ放り込みつつ、「そいつらは俺たちとそっくり同じ姿なんだってよ。この町にも何匹か紛れ込んじまってる」
 ぼくがこいつと友だちでいる理由? そりゃもちろん子どもの総数がめちゃくちゃに少ないから、やむをえずそうしてるだけだ。誰が四六時中与太を吹かしまくる脳足りんなんかとつるみたがる?
「どこからだと思う? 驚くなよ、すぐおとなりの惑星からなんだぜ」
 ぼくは鷹揚にうなずきつつ、〈ヒョウロク玉〉を口へ放り込む。こいつなしで与圧されていない学校の外へ出るのはまずい。窒息しちまう。「なるほど、そりゃ一大事だ」
「いいか、よく聞け」飛来する唾をさりげなく手のひらでガードした。「そいつらはちびのくせに俺たちより何倍も重い。この星よりはるかに重力の強い惑星で生まれたからだ。お前なんか連中のパンチを一発でももらったら即、お陀仏だぜ。本当の話」
 その伝でいけばこいつ自身も一発でお陀仏のはずだが、ぼくは黙っておいた。一刻も早くこのうすばかから解放されたい。
「お前の家族は一人残らず宇宙人だ」城島は実に不愉快なにやにや笑いを浮かべている。「そして、お前の好きなあの娘もな」
 ぼくは拳を固めた。「少し黙ったらどうなんだ?」
「いいや、黙らないね。俺はお前にもっと危機感を持ってほしいから、あえて言いたくないことを言ってるのさ」
「お前はぼくにいやがらせをしたいだけだ。地獄へ失せろ、くそったれめ。なにが宇宙人だ。どうかしてる」
 これ以上気色の悪い笑顔があるだろうか? 「せいぜいそう思ってるんだな」

     *     *     *

 誰も外に興味を持たなかった。誰もがだ。ただの一人もだ!
 だが彼はちがった。グローバル化の波を優雅にサーフィンする方法――多国間サプライチェーンマネジメント――を大企業にタレこむことで、巨万の富を稼いだ男。やつはありていに言って、気ちがいであった。
 地球はいまや百億人の人口を抱えて圧潰しかけているものの、それでもなお宇宙植民にかかるコストと人口危機の脅威はまったく勝負にならなかった。むろんコストがつねに勝利を収めたのだ。
 億万長者は生来の開拓者だった。知らない土地へ! それが彼のすべてであった(そうした気質がグローバル時代を手玉にとれた理由だったのだろう)。
 地球に知らない土地はもうない。よろしい。合衆国の火星有人調査船一隻に(現地で与圧ドームを建造するスタッフはレンタルである)、カリブ諸島あたりで絶賛営業中の違法体外受精クリニックから受精卵を数十個買いつけて、準備OKだ。
 愉快なジャスパー・マーチスン開拓船団のできあがりである。

     *     *     *

 気ちがいが旅立ってから幾星霜のときが流れた。
 人びとはひいじいさんから聞かされていたおとぎ話を突然思い出した。「そういえばあいつ、どうしてるかな?」
 当然、マーチスンは死んでいるだろう。だが例の受精卵は? 火星で立派にやっているのではあるまいか? もしそうなら一目見たいと思うのが人情だろう。
 彼らの子孫は立派にやっていた。彼らは妙に痩せていた。彼らは妙に身長が高かった。一発お見舞いすればお陀仏になるくらいに。火星の低重力に順応したのだ、このたかだか二世紀ほどのあいだに! 驚くべき自然淘汰の圧力!
 城島は確かにUFOを見た。それはもちろん未確認飛行物体などではなく、地球から派遣された大規模調査船団だった(地表にいる城島からすると、低軌道を周回しているそれらは複数の光点にしか見えなかったはずだが)。
 もしかすると、着陸艇から這い出してきた宇宙服姿の科学者連中さえ見たのかもしれない。確かにやつらは宇宙人だ、少なくとも火星人である城島からすれば。

     *     *     *

 ぼくのドームは目と鼻の先だ。ようやくこいつとおさらばできると思った矢先、「それ」が眼前に立ちはだかった。
「ハロー! 火星の子どもたち」
 真っ白くてごわごわした服に、ぷっくり膨らんだ頭部。おまけに英語までしゃべっている。戦慄すると言葉が出てこないらしい。ぼくは城島のほうにちらりと目くばせする。あえぐように、「こいつがそうなのか?」
 やつは例のにやにや笑いを浮かべている。「だから言っただろ、宇宙人がきてるって」
「怖がらなくていい。わたしは地球からきたんだ。ところできみたち、なぜ生身で生きてられるんだい?」
 ぼくは護身用の拳銃でそいつを撃った。脱兎のごとく逃げ出す。
 やつの声が耳にこびりついて離れない。「だから言っただろ?」
 いや、とぼくは思う。あれがぼくらにすり替わるだって?
 それだけはありえない。これだから城島の都市伝説はあてにならないんだ。


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このストーリーに関するコメント

17/03/10 時雨薫

面白い!途中で突然時代も場所も変わるのが本当にうまい書き方だと思います。読者を置いていきながらもオチに行きつくと納得させる感じ、たった二千字でも場面転換の大切さを感じました。

17/03/11 本宮晃樹

時雨薫さま
コメントありがとうございます! 正直なところ詰め込みすぎてまとまりを欠いてしまったと思っていたので、そう言ってもらえると非常に嬉しいです。またお暇なときに気が向いたら、ほかの子たちも見てやってください。ありがとうございました。

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