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石蕗亮さん

占師。および魔術師。 WEB幽にて怪談投稿してました。 弟子育成の経験や実体験を基にした不思議な話を中心に書いていきたいです。 沢山の方に読んで頂き、反論含めコメント頂けると幸いです。

性別 男性
将来の夢 作家、起業
座右の銘 人は言葉に置き換えれるものしか理解できない。置き換えた言葉でしか理解できない。

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飼育とランク

17/03/06 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:12件 石蕗亮 閲覧数:927

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宝くじが当たりちょっとした臨時収入があった。
当たったといってもちょっと良い食事を二人ですれば無くなるほどだ。
彼女を誘って「何が食べたい?」と聞くと「焼肉」と云うのでステーキも品揃えしている店を選んだ。
正直フランス料理とか格式のある所でなかったので安心した。
とてもではないが金はあってもマナーに気を使いながら食事という気分ではなかった。
店に入り席に案内されるとメニューから早速A5和牛のステーキを注文した。
料理が来るまでの間、彼女が「そういえば知ってる?」と話し始めた。

「昔ね、と言っても今でも在るんだけど。毛の色が黒の人種だけを集めて収容している施設があるの」
 「黒ってことはアジア系だよね?日本もそうだけど」
「そうかもね。私、毛の色は詳しくないから何とも言えないけど。ブラウンとか他の色は別の用途で別の施設があるみたい。そこではね、ちゃんと食事も出されて安心して生活できるんだって。施設は幾つかあって多少の差はあるらしいけど、施設によっては運動とかも自由にできる所もあるみたい」
 「福祉施設か何かかな?」
「そうね。でも赤ん坊の頃からそこで生活しているのも居れば、そこで子供を産んで一生を終えることもあるみたいよ」
 「終身施設なんて聞いたことないけどね。なんでそんな施設あるんだろう?」
「ちゃんと管理されている施設だから食べることにも寝ることにも困らないし、定期的に予防接種なんかもあるんだって。でもね、その施設では子供を作らない場合は一定年齢での死亡率が100%なの」
 「え!?死亡率100%?そんなことなったら報道されるでしょ!」
「しかも死亡原因は成人病。正確には死亡ではなく、死ぬ前に処理されちゃうんだけどね」
 「処理って…。何かの医療的な臨床試験とか?」
「違うわ。そこでは成人病を発症させるのが目的の施設なの」
 「…。それって、都市伝説…だよね?」
ふふふ、と彼女は楽しそうに笑顔を見せたが直後、感情の無い顔で「現実よ」と言い切った。
「その施設では衛生や病気にも注意を払い、食事の原料にも拘っているわ。そしてある時期までは健康な身体をつくる為に運動もさせる。
でも、そのある時期を過ぎると食事が過剰になってくるの。
高カロリー、高蛋白質、でも美味しいからどんどん食べてしまう。しかも食事が足りないなんてことはないの。毎日満足できる食事量が用意されているの。
だから気付かないうちにどんどん栄養を過剰摂取し日に日に成人病の身体へと変化させられるの。
でも、誰もそれを教えてはくれないの。その施設の怖いところは病気であることを教えないことじゃなく、それがストレスになると判っていて敢えて教えないというところなの。
物理的だけじゃなく、精神的にも健康な状態を維持しているの。
ただ、必ず成人病になるわ」
 「何の為に!?」
「何の為?人間の利益と満足の為よ。その為に敢えて成人病を発症するように管理しているのよ。
その施設では日々、段々体内の脂肪値が上がっていくのを、身体が肥大していくのを見て管理者達は嬉々として作業をしているのよ。
そして重度の成人病になり、目も見えなくなってくると頃合いで処分されるらしいわ。
きっと処理される方も、何でこんなに苦しいのに助けてくれないんだろうって不思議に思っているでしょうね」
 「まさか」
「本当よ」
苦笑いで誤魔化そうとする俺に彼女は相変わらずの真顔で答えた。
 「都市伝説なんだろ、日本じゃなくて外国の。日本だったらとっくに問題になってるはずだもんな」
「日本の話よ」
 「嘘だ!どこにそんな施設があるっていうんだよ!」
「人気の上位は意外と東北なのよね。山形の米沢とか仙台とか。あとは九州なんかも人気あるわ。宮崎とか佐賀とか」
 「そんな…、まさか全国各都道府県にあるのか!?そんな施設が」
「私、地理とか苦手だし、好きなものしか興味ないから全部は知らないけど。あるかもね。あと有名所だと松坂とか神戸もあるわね」
 「米沢、仙台、宮崎、佐賀、…ん?松坂?神戸?」
「あ、気が付いた?」
思わずステーキのメニュー表を開く。
そこに答えは載っていた。
 「なぁんだ、怖い言い方するなよ〜」
笑って応える俺にまたしても彼女は真顔で「怖くないわよ。事実だもの」と言い放った。
「A5ランクのサシほどの脂肪が身体についているのよ。健康な状態なわけないじゃない。
さっき言ったことは全部本当よ。種牛や産む牛以外、食用にまわされる牛たちはそうやって飼育され、その脂肪の質と赤身との比率でランク分けされるのよ」

そうこう言っているうちに料理が運ばれてきた。
「お待たせ致しました。ご注文の松坂のA5ランクステーキでございます」
「美味しそう!」と目を輝かせる彼女と対照的に俺の食欲は下がっていった。
だってその霜降り肉って。


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このストーリーに関するコメント

17/03/06 白虎

拝読しました。
今迄何気無く食べてた肉が実はそうやって作られていたとは!都市伝説だと思いたいです。

17/03/07 ナマケモノ

初めまして。
お肉が食べたくなくなるお話でした。擬人化って怖いですね。

17/03/08 石蕗亮

白虎さん
事実は小説よりも奇也
です。

17/03/08 石蕗亮

ナマケモノさま
初めまして。お読み頂きありがとうございました。
私も最初この事実を知った時はそう思いましたが、今では相変わらず焼肉大好きです。美味しく食べることが最大の供養かと。

17/03/08 斗真

拝読しました。
今迄考えたこともありませんでした。肉のできるまでなんて。
でも言われれば納得の内容でした。
肉を見る目が変わりました。

17/03/09 霜月秋介

石蕗亮さま、拝読しました。

恐ろしい施設もあるもんだなと読み進めてたら、そういうことでしたか!まんまとやられました(笑)
成人病になればなるほど、脂がのって美味しいですもんね(笑)

17/03/10 海神

拝読致しました。
日常にありふれた食材だけに生々しいことこの上ないお話しでした。

17/03/10 石蕗亮

斗真さん
コメントありがとうございます。
そうなんです。上質なお肉って。私は安くて健康な肉で充分だと思いました。笑

17/03/10 石蕗亮

霜月秋介さま
お読み頂きありがとうございます。
彼女の悪戯心が恐ろしさとして出したつもりでしたが。引っかかって頂きありがとうございました(о´∀`о)やった〜

17/03/10 石蕗亮

海神さん
日常的故に都市伝説成りうるかと思いました。
都市伝説じゃないんですけどね。笑
小説よりも奇也な事実なので価値観に震えるものがあれば嬉しいです。

17/03/17 待井小雨

拝読致しました。
そんな施設都市伝説でしかないだろう、と思っていたらまさかの……。そうですよね、食用の牛たちならば都市伝説でも噂でもなく本当のことですよね……。我々人間の恐ろしさを考えさせられました。
施設の話自体もですが、食事の前にこの話をする彼女の方こそが恐ろしく感じられました。

17/03/28 石蕗亮

待井小雨さん
コメントありがとうございます。
都市伝説の怖いところはその話自体とそれを伝播させる人間にあると思います。
だから語り手が如何に話すかで都市伝説足り得るかの一因を担うと思います。

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