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鯨幕村中さん

よくころがる系青少年(仮) またの名を命名おじさん。

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将来の夢 飽きるくらい、モッツァレラを食べること
座右の銘 反面教師

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榎竹子はそれでも諦めない

17/03/06 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:1件 鯨幕村中 閲覧数:316

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 僕、夏水聡の目の前に形容し難い色合いの形容し難い物体が蠢いている。
 時折奇妙な声もあげていて、べちょべちょと音を出しながら僕に襲い掛かろうとしていた。

「……竹ちゃん、コレなに?」

 この物体Xを持ってきたクラスメイトの榎竹子こと竹ちゃんに僕は恐る恐る訊ねた。

「何って、調理実習で作ったクッキーだけど?」

 竹ちゃんはさも当たり前のような顔で答えた。
 僕は目をこすって再び竹ちゃんがクッキーと呼ぶ物体Xを見た。やはり最初見たものと一切変化することもなく、蠢く物体がそこにはあった。

「……自ら蠢くクッキーなんて僕始めて見たよ」
「あぁ。だから先生は驚いていたのね。納得したわ」

 やっと気づいたらしく、竹ちゃんはポンと手を叩いた。

「アタシどうしても料理だけはダメなのよね。ちゃんと分量どおりに材料を使って普通に料理しても、こんな風に失敗してしまうのよ」
「これを果たして失敗の括りに入れてもいいのだろうか?」

 僕の頭の中は既にこの謎の生命体のことで頭が一杯だ。

 ん、待てよ? 分量どおりなら例え見た目はアレだとしても、味はマシなのでは?

 そんな考えが過ぎって、僕は生命体Xを少し摘む。すると、べちょという嫌な感触が手にまとわりつく。余りにも奇抜な色に脳内で食欲が激しく減退するが、覚悟を決めて口に入れた途端、
 体中のあらゆる細胞が拒絶反応を示し、僕は床へと倒れこむ。

「気をつけてよ、一応試食した先生も病院送りになったんだから……、って遅かったわね」

 あららと彼女はミネラルウォーターを差し出した。体が弛緩して上手く動かせない体をなんとか踏ん張って水と受け取り、一気飲みするとなんとか症状は緩和した。
 それにしても、分量どおりに作っているのに人体に悪影響を及ぼす。竹ちゃんの料理は生物兵器の類いなんだろうか?

「とりあえず失敗を糧に精進しなきゃね。また作ってもってくるわ」
「え゛っ」

 彼女はそう言って倒れている僕を置いて教室から出て行った。


 それから、何回かお菓子を作ってもって来てくれた彼女だが、案の定毎回謎の生命体Xが爆誕していた。それはもう創造神の領域に達したといっても過言ではないだろう。
 一向に料理が上達しているような様子も無く、僕の胃袋も毎回悲鳴を上げていた。

 彼女がもし結婚したら、彼女の旦那さんが彼女の手料理を食べて三途の川を渡ることだけは無いように僕は祈ることしか出来ないのであった。


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このストーリーに関するコメント

17/03/09 時雨薫

「榎竹子こと竹ちゃん」ではなくて「竹ちゃんこと榎竹子」ではないでしょうか?
些細なことですが一応。筆力向上のためのサイトですし。

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