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冬垣ひなたさん

時空モノガタリで活動を始め、お陰さまで3年目に入りました。これからも勉強を重ね、たくさんの作品を書いていけるよう頑張りたいと思います。 写真を撮り、絵も描きます。こちらでupするなかで、特に記載のない画像は冬垣の作品です。 ・ツイッター https://twitter.com/fuyugaki_hinata ・時空モノガタリでもお読みいただける、拙作「渋谷スイングバイ」の動画があります。 内容は同じですが、音声読み上げ朗読、エンディング付きです。 「softalk朗読渋谷スイングバイ」  https://www.youtube.com/watch?v=6nsb8bo8Egs (=は半角に直してください)

性別 女性
将来の夢 いつまでも小説が書けるように、健康でいたいです。
座右の銘 雄弁は銀、沈黙は金

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ホワイトデー・パニック

17/03/04 コンテスト(テーマ):第129回 時空モノガタリ文学賞 【 都市伝説 】 コメント:4件 冬垣ひなた 閲覧数:406

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 『ねえ、聞いた?こんな話』
 『知ってるよ。新米カップルは、ホワイトデーに破局する……』


「おはよう!」、高校の廊下で和弘の姿を見つけたとき、まどかはほっとした。
「また後で」
 友達と談笑していた和弘はすぐ自分の教室に入って行く。新米カップルは冷やかされないよう、貴重なアイコンタクトの時間は迅速に。本当は今すぐ駆け寄って話したかった。今日は3月14日のホワイトデー。けれどもまどかはちょっと憂鬱だった。それというのもSNSの噂を見てしまったからだ。
 

 クリスマスぼっち……『クリぼっち』が嫌で彼女にアタックした男は、重なる恋人イベントを見栄でクリアして、ホワイトデーのプレゼント代を惜しみ彼女とサヨナラするのだと……。

 『え〜、だって飽きるじゃん』
 『女めんどくせぇw』
 『またクリスマス前に見つけりゃいいし』

 ネット上を流れる真に迫った噂によって、クリスマスぼっちの衰退とともに、今はホワイトデーぼっち、『白ぼっち』が勝ち組なる風潮が、ネット上で高まっていた……。



 まどかが和弘と恋人同士になり、お互いクリぼっちを卒業したのも、クリスマス前の事だった。焦ったという気持ちはないが、部活の先輩後輩の間柄で、気が付けばどちらからともなく「付き合おうか」という空気になって行った。ドラマのような情熱的でロマンチックな動機でもなかったので、まどかは痛い所を突かれたようにドキリとした。
「まさか、先輩は白ぼっちがいいんじゃ……」
 疑っては悪いと思うのだけれど、しかし情報誌どおりのデートコースを進む和弘の笑顔にハッとした瞬間の緊張が見えて、まどかは少し考え込んでしまう。
 すごく嬉しいけど、先輩は私と付き合う事に無理を感じてはいない?最近電話も少ないし。3か月ほどの間に私への気持ちがさめてしまったのかも……。


「まどか。ごめん、待った?」
 だから放課後待ち合わせたファーストフード店に、和弘が慌てたようにやって来たとき、まどかはどんよりした表情を不審に思った。


 今日の和弘は本当におかしかった。ちょっと寝不足なのか顔色が冴えない。
 注文を間違えるし、ドリンクをこぼすし。「大丈夫?」と聞いてもぎこちなく笑うだけで、ちっとも楽しそうでない。
「美味しいね」と言っても、「ん……やっぱりこんなのじゃ、まどか喜ばないよな」と後ろ向きな言葉を呟いたり、とても挙動不審で、いつもの落ち着いた和弘らしくなかった。
 まさか、白ぼっちが良くって、私と別れることを考えているの?
 まどかの中でどんどん不安が膨らむ。
 私のどこがいけなかったんだろう。
 可愛くもないし、性格も並みだし、頭だってよくないし……先輩に釣り合わなかったのかな……?


 まどかが暗い顔をしていると、沈黙に耐え切れなくなったのか神妙な面持ちで和弘が問うた。
「あのさ! まどかは俺の事、どう思っているの?」
「え?」
「俺、俺。まどかに白ぼっちされたらどうしようと思って、全然眠れなかったんだ……!」

 聞いてみると、和弘がSNSで見た『ホワイトデーぼっち』の話は、まどかの知っているものとは違っていた。

 クリぼっちが嫌で男と付き合い始めた彼女は、カップルイベントを見栄で過ごし、巨額のホワイトデーのお返しを受け取ってから、彼氏とサヨナラするのだと……。

 『え〜、だって飽きちゃったんだもん』
 『男めんどくさいw』
 『またクリスマス前にGETすればいいし♡』

……慌てて二人でSNSをしてみると、確かに情報が混乱していた。
 男女どちらの主張にも話に尾ひれがついていて、情報源も分からないままに色んなバージョンの白ぼっちの別れ話がインターネット上を飛び交っている。
 落ち着いて考えてみれば、真偽なんて誰にもわからない。無責任に放置された言葉のゴミであり、見る人の不安を糧に、毒と悪意がひとりでに膨らんで成長しているかのようだった。
「……まるで都市伝説みたいだね」
 二人は溜息をつく。
 まことしとやかに流布する噂は、信じればそれは本物になる。不信感とともに重く張り付いてお互いを苦しめ、それは新しい伝説を生む。

 『あ、あのカップル別れたわね』
 『白ぼっちだったんじゃない?』
 『あ〜やっぱりw』


 ……ホワイトデーに、先輩に貰ったお揃いのキーホルダーは、今もかばんに着けている。匿名社会の呪いの解けたその後は、二人して安心してちょっと涙ぐんでしまい、それから固くお互いの手を握った。
 この事を通じて、私たちの絆は噂の影に負けない程強くなった。
 それに先輩が言ったの。
「馬鹿だった、こんないい言葉があるのに、あんな噂に惑わされるなんて」
 そう、これはずっと古く由緒正しい都市伝説なのよ。

 『俺たちは、赤い糸で結ばれている』


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このストーリーに関するコメント

17/03/05 浅月庵

冬垣ひなた様

拝読いたしました。
高校生カップルの都市伝説に躍らされて
不安になってしまう展開が初々しくて
良いですね。
白ぼっちと赤い糸が対義語みたいに思えるのと同時に、
色彩のコントラストが目に浮かぶようで......
好きな作品でした!


17/03/06 冬垣ひなた

浅月庵さん、コメントありがとうございます。

普段恋愛ものあまり書かないので、我ながら照れてしまいます。
ネットを題材にした話は以前から書いてみたかったので、今回挑戦出来て良かったですね。
ストーリーの中での対比は私もすごく好きなので、気に言って頂けて嬉しいです。

17/03/09 霜月秋介

冬垣ひなた様、拝読しました。

もうすぐホワイトデーですね。バレンタインデーは、ホワイトデーでお返しを貰うためにあるように認識してる方もいるのではないでしょうか?(笑)
SNSに左右されるカップルの焦りが、リアリティーがあって面白かったです。

17/03/10 冬垣ひなた

霜月秋介さん、コメントありがとうございます

ホワイトデーはバレンタインより売り上げがいいそうですね。昔洋菓子店で働いていましたが、奥さんがお返しを買いに来られる場合が多く、財布の紐はきっちり握られているようですよ。
アイデア自体が「他の方ならきっと面白く書けるだろうなぁ」と思いついた作品だったので、私にとっては難題でした。霜月さんのように、頑張って上手くなりたいです!


ふぉっくすさん、コメントありがとうございます。

私も元々は小説を読むのが好きな、時空モノガタリの一読者でした。色々とご縁があって書く側にまわりましたが、今でも投稿されるすべての作品を拝読させていただいています。
こちらのサイトでお世話になり3年目ですが、書く者としてまだ未熟であることは、読み手でもある私は常々痛感しています。小説を書くための本を読んで、模写も試みているのですが、自分の感じる違和感が具体的に何なのか分からなかったので、ご指摘非常にありがたく思います。
書き慣れないタイプの作品で、読みにくくなってしまい申し訳ありませんでした。今回の作品を振り返り、改行を挟まずスムーズな流れを作るという構成の作業をもっと練っていればよかったと思いました。苦手な心理描写をもっと踏み込んで書く、という事も気を付けます。
「……まるで都市伝説みたいだね」は、確かに含みを持たせた言い方にした方が良いですね。普段は同じ言葉を2度用いない事に気を配っているのですが、今回は言葉の繰り返しを用いたので、文章の完成度が落ちる悪い面が出て、自分の思考もやはりそこで止まっているのかもしれません。そのような部分もふぉっくすさんにお読みいただき、ご感想を頂くまでわかりませんでした。
わざわざお時間を割いてのお言葉に感謝します、これからも精進して創作に励みたいと思います。

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