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林一さん

性別 男性
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四月一日

17/03/03 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:2件 林一 閲覧数:211

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 二年前。四月一日。彼の部屋。
「はい、プレゼント」
 彼は私に、青色のリボンがついた黒い箱を渡してきた。
「ありがとう。開けていい?」
「いいよ」
 何が入ってるんだろう? この大きさだと、アクセサリーかな? そんなことを考えながら箱を開けると、中からカエルが飛び出してきた。
「キャー!」
 彼は驚く私を見て、いたずらっぽく笑っている。
「大丈夫。ただのおもちゃだよ」
「もー。ひどいわ」

 一年前。四月一日。私の部屋。
「はい、プレゼント」
 彼は私に、黄色のリボンがついた白い箱を渡してきた。
「怪しいわね。去年騙されたこと、忘れてないわよ」
「去年は悪かったよ。今年はそのお詫びにと思ってさ。ちょっと奮発して買ってきたんだよね」
「本当?」
「本当だよ」
「じゃあ開けるね」
 箱を開けると、中からヘビが飛び出してきた。
「キャー!」
 彼は驚く私を見て、去年と同じように笑っている。
「大丈夫。ただのおもちゃだよ」
「もー。また騙したわね」

 今日。四月一日。彼の部屋。
「はい、プレゼント」
 彼は私に、赤と白のストライプの箱を渡してきた。
「もうすっかり恒例行事ね。いくら騙されやすい私でも、さすがに三年連続は騙されないわよ」
「今まで本当にごめん。だけど今年こそはちゃんとしたプレゼントなんだ。だから開けてみてくれよ」
「もう信じられないわ」
「お願いだ。この通り」
 彼は正座をすると、両手をついて頭を下げてきた。
「そこまで言うなら……」
 私は渋々ながらも箱を開けると、中には黒い指輪の箱が。
「えっ! これって、もしかして……」
 彼と付き合って三年。ついにこの時がきたのだ。自然と目がにじんでくる。
「早く開けてみて」
「うん」
 指輪の箱を開けると、中からカエルが飛び出してきた。
「キャー!」
 彼は驚く私を見て、またもやあの笑顔を見せてくる。
「大丈夫。二年前と同じ奴だよ」
「最低。信じらんない。あんたとなんてもう終わりよ」
 私は怒って家を飛び出した。
 今までのイタズラは笑って許せたけど、これだけは許せない。だって、私はもう今年で三十路よ。当然彼とは結婚を考えて付き合ってたのに。まさか、プロポーズの嘘をつかれるだなんてあんまりだわ。
 近所の公園のベンチで泣いている私の元に、彼が走ってやってきた。
「ごめん、さっきは悪かったよ。突然だけど、今何時か教えてくれないか?」
「なんでこんな時に時間なんて聞いてくるのよ。ふざけないで」
「いいから教えてくれよ。お願いだからさ」
 腕時計に目をやると、ぴったり日付が変わる瞬間だった。
「ちょうど今0時になったとこだけど、それが何よ」
「良かった。これで嘘じゃなくなるな」
 彼は胸ポケットから、白い指輪の箱を取り出した。
「俺と結婚してください。死ぬまで一生大切にします」
 そう言うと彼は、箱からダイヤの指輪を取り出し、私の左手の薬指に優しくはめてくれた。
「最初から普通に渡しなさいよ。意地悪な人なんだから」
 私は彼の胸へと飛び込んだ。
 
 彼に抱き締められながら、私は思い出してしまった。腕時計が三分進んでいたことを……。


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このストーリーに関するコメント

17/03/09 雪見文鳥

良い話だなーと思ったら、最後の1行がまさかの展開でしたね(笑)
彼と女性のかけあいがとても面白かったです。

17/03/09 林一

雪見文鳥さん、コメントありがとうございます。
2人のかけあいを楽しんでいただけたみたいで嬉しいです。

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