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ぴっぴさん

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セカンド・プロポーズ

17/03/02 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:0件 ぴっぴ 閲覧数:183

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「永遠の愛って本当にあると思うか?」
居酒屋トークには合わない重厚さに戸惑った。外資系の先輩に失恋の愚痴を聞いてもらおうとバーのカウンターに二時間前から並んで座っている。客は自分たちを入れても五人ほどである。
「結論から言おう! 答えは『ある』だ!」

瞬間の愛もなかったのに永遠の愛なんて論外だよ。先輩。

「では、一つ踏み込んで『永遠の愛の作り方』を教えてやろう! ちゃんと聞けよ」
僕はこの時だけ少し姿勢を正した。
「この世は永遠のものなんてないと思っているが実は永遠のものがある。なんだと思う?」
「さあ?」
「円周率さ」
「まあ、確かに」
「男と女がいるだろ? 例えばその男が女にプレゼントをしたとする。女は嬉しくなり男にもっと良いプレゼントを返そうと思う、そうしたら男はもっともっと良いものをプレゼントするのさ。それがグルグル続いて行ったとき二人は回り始めるんだよ。駒のようにな」
「なるほど」
「その回転が早ければ早いほど全くブレない中心が生まれるんだ。この場合はプレゼントだがな。そして少々トラブってフラついてもすぐ立ち上がって安定する」
「『ちはやふる』ってヤツですか?」
「言いたいことは何かって言うとだな、この世はそうやって出来てるってことだよ。原子を見てみろ。原子核の周りを電子が飛んでるだろ?それが仮に太陽系サイズになったとしてもグルグル回っているから永遠性が生まれるんだよ」

原子も太陽系も見たことないです。

「ただし! プレゼントだけじゃあダメだ。会えばポケモンの話しかしない関係なんて苦痛以外のなにものでもない。たまにはグルメの話やヒットしている映画の話、政治の話だっていい。あらゆる角度から会話をするのさ。するとな、ただの『円』だった関係が、今度は『球』になってゆくんだ。 遠巻きに見たらもう一つにしか見えない関係になって、二人はいつしか一つの存在になっていく」

そうだよな……そういう単純な日々……そんな普通の愛をドミニクと作りたかったよ。

「でな、男と女の究極のやりとりって何だと思う?」
周りの客の様子を伺い小声で「セックス?」と言った。
「お前! 分かってるじゃん! なぜなら一つになりたいっていう人が持つ本能なんだよ! 本能ついでで言うけどな、生殖できなくなった動物のメスが長生きできないのが自然界なら、なぜ人間の女は男よりも長生きなんだ? 繁殖期もないんだぞ。答えは一生をかけて混ざり合うためだ」

先輩。オレはドミニクの前にその愛を散らしてきたんです。彼女のためなら一生面倒くさいことでも進んで出来ると決意していたんです。

「だから本当の愛っていうのはさ、最初の一歩が大事なんだよ。生まれて初めて海を見た山と、生まれて初めて山を見た海が出会って感動して雷にうたれた衝撃で出会わないとな……ダメなんだよ」

それはなんとかく分かる。
ドミニクに最初に会ったときは確かに雷に撃たれた。本当に息が止まるかと思った。

「ところでお前彼女いるの?」
「昨日までいました」
「はぁ? 別れたてかよ?」

先輩、声大きいです。
昨日、ドミニクの前に跪いてプロポーズした。
断られるかもしれない。
その恐怖は人生最高で経験のない質のものだった。まるで命までもルージュの7に一点張りした気持ち。僕にお金があっても、顔がイケていてもドミニクからの愛を受けられる保証などない。結婚してくださいと言った後は震えることしかできなかった。

「なんで別れたんだ?」
「昨日ドミニクにプロポーズしました」
「はぁ? 外人かよ?」
「アメリカです。日本語もペラペラなんで言葉は大丈夫です」
「それで?」
「愛しています。今すぐ答えなくてもいいからドミニクの本当の言葉を聞かせてください……って言いましたよ」
「やるね! 青春だね!」
「そうしたら……そうしたら……」
「涙ぐむな」
「そうしたら『アホみたい』って言われたんです」

結局ここで涙腺が決壊した。

「そのあとお前はどうしたんだ?」
「え? 走って逃げましたよ」
「本当、アホみたいだ。彼女が言ったのは『 hold me tight』きつく抱きしめてだぜ。いったいどう聞けばアホみたいに聞こえるんだよ」
「えっ? なんで英語?」
「お前が本当の言葉で言えって言ったからだろ?」
「先輩! 今からドミニクに会ってもう一回プロポーズしてきます!」
「おい! ここは奢りなんだろうな?」
「ここにいる全ての客は僕の奢りです」
店中に響く割れんばかりの拍手の中、僕は颯爽と店を出た。


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