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海見みみみさん

はじめまして。 時空モノガタリで修行させていただいています。 焼き肉が大好物。

性別 男性
将来の夢 プロ小説家になること!
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飛行自転車は少女と夢を見るか

17/02/27 コンテスト(テーマ):第130回 時空モノガタリ文学賞 【 失敗 】 コメント:2件 海見みみみ 閲覧数:211

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 これはとある異世界のお話です。

 ここはオルコ島。
 この小さな島のはずれに、変わり者で知られる男が住んでいました。飛行機オジサンこと、ヤンさんです。
「ヨヨ、しっかり見てろよ」
 島のおくにある森。そこでヤンさんは自分が作った飛行自転車の試運転をしようとしていました。
「また失敗するんだからやめときなよ」
 切り株に座りながら少女、ヨヨはそうつぶやきました。その手にはいつも首から下げているコンパスがにぎられています。
「やってみなきゃわからないさ!」
 ヤンさんが飛行自転車をこぎ始めます。飛行自転車は次第に動き出し、谷に向かって加速しました。そして谷をこえようとした時!

「ぎゃー‼」

 飛行自転車はあえなく谷底に落下しました。


「いてて」
「大人なんだからガマンする」
 谷から落ちてケガをしたヤンさんをヨヨは手当てしてあげました。
「これで九十九回目の墜落(ついらく)。これだけ失敗したんだから、もうあきらめたら?」
「次の百回目で飛べるかもしれないぞ。それにもうコツはつかめた」
 ヤンさんの言葉にヨヨはため息をつきました。

 飛行自転車を回収し、ヤンさんの家まで運びます。そのとちゅうでヨヨは同じ小学校の同級生に会いました。
「あっ、ヨヨのやつまた飛行機オジサンといっしょにいる!」
「やーい、変人! また墜落したんだー!」
 同級生がヤンさんに石を投げてきます。するとヤンさんは大声で「ガオー‼」とさけびました。
「わあ、飛行機オジサンがおこったー!」
 にげていく同級生たち。そんな光景を見て、ヨヨはため息をつきます。
「くやしくないの、バカにされて」
「くやしいさ。だから飛ぶんだ」
「バカじゃないの⁉」
 とつぜんヨヨがおこりだします。
「何度も空を飛ぼうとして、その度失敗してるから『飛行機オジサン』なんてバカにされるのよ⁉」
 ヨヨの言葉はとても厳しいものでした。しかしヤンさんはそれを気にせず笑みをうかべます。
「空を飛びたい。そのためなら何回失敗しても構わない。たとえ失敗してバカにされてもな」
 そうハッキリ告げるヤンさんに、ヨヨは「バカ」とつぶやきます。
「本当はヨヨにだって何回失敗してもかなえたい夢があるんじゃないか?」
 ヤンさんの言葉に、ヨヨは無言でコンパスをにぎりしめました。

 夕方になり、ヨヨは自宅のパン屋さんに帰りました。
「おかえりなさい、どこ行ってたの?」
 ヨヨのお母さんが問いかけます。しかしヨヨは無視しました。それを見てお母さんは察したようです。
「あんた、また飛行機オジサンのところに行ってたね! イタズラされたらどうするんだい⁉」
「ヤンはそんな人じゃない!」
 声を張り上げるヨヨに、お母さんは困ったような顔をします。
「いいかいヨヨ。あんたはこの店の唯一(ゆいいつ)の跡継ぎ(あとつぎ)だ。飛行機オジサンみたいにヘタな夢を見て失敗するより、パン屋を継いだ方が安心だわ。わかったかい」
「……はい」
 唯一の跡継ぎ、その言葉がヨヨに重くのしかかります。私はパン屋を継がなくちゃいけない。それに失敗だってしたくない。でも、本当は……。ヨヨは自分の気持ちにフタをしました。

 次の日。
 青空の下、ヨヨたち小学生は外で授業を受けていました。
「今日はみなさんに将来の夢を話してもらいます」
 先生の言葉にヨヨの気分は重くなりました。もう自分の将来は決まっています。それをいまさら発表してなにになるのでしょう。
 同級生たちはみんな自由に将来の夢を語ります。いいな、そうヨヨは思いました。
「それでは次はヨヨさん」
 先生の声を聞き、ヨヨは立ち上がります。自分が本当に望んでいる将来の夢。それにフタをしてヨヨは口を開きます。
――私の将来の夢はパン屋の跡継ぎになることです。
 そう語ろうとした時でした。

 上空に大きなかげが差します。いったいなんだろう。そう思い上を向くと……。

 そこには飛行自転車で自由に空を飛ぶヤンさんの姿がありました。

「やっと成功したぜ! ちょっと島の外まで飛んでくる。ヨヨ、またな!」
 そう口にし、ヤンさんは遠くへ飛んで行ってしまいました。同級生たちは「すげえ!」「かっこいい!」と大さわぎです。
 あれだけ失敗したのに、いや失敗したからヤンは空を飛べた。……だったら、私だって! ヨヨの中でフタをしていた想いが爆発(ばくはつ)します。コンパスをにぎりしめ、ヨヨは語りました。

「……私の夢は、オルコ島の外に出て探検家になることです! 何度失敗しても、絶対にあきらめない立派な探検家に」

 同級生たちがヨヨの言葉におどろきます。
 対して、そう語るヨヨの顔は笑顔でした。


おしまい


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このストーリーに関するコメント

17/03/24 雪見文鳥

とても面白かったです! ラストで飛行自転車での飛行に成功したところで感動しました。
ファンタジーの、可愛らしい雰囲気のお話でした。これからも頑張ってください。

17/03/24 海見みみみ

雪見文鳥さん
ご覧いただきありがとうございます!
ラストシーンで感動していただけてとても嬉しいです♪
これからも頑張ります!

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